〜車知継ぎ〜 日本の伝統的な継手の技術
2024年5月28日車知継ぎ(シャチヅギ)は、日本の伝統的な木工技術で、金物を使わずに木材同士を接合するために用いられます。この技術は、日本の建築や修理工事で古くから使われており、大工さんたちによって技術が継承されています。
車知継ぎ(しゃちつぎ)
車知継ぎは、竿車知継ぎ・車知栓継ぎと呼ばれることがあります。
竿ほぞ両端とほぞ穴両端に平行に車知栓の道(斜め合わせの切り欠き)に車知栓を打って締める確実性の高い継ぎです。
2つの部材の上端に取り付けて、部材同士を引き付けるために使われます。金具を一切使わない伝統工法であり、木の栓は一生引き続けることができます。
1000年以上立ち続けている頑丈な建物でもこの工法が使われていることがあります。
車知栓の打込み加減や、後からの増打ちで継手の胴付き部分の隙間を空けたくない場合に適しています。
車知栓は、長方形断面をもつ、薄くて長い栓で、打ち込むことで材同士を引きつけ、緊結させる働きをします。
栓の材料は堅木で、欅の材料が一般的です。
「栓」は、ほぞの引っ張りに抗する形に変えるものとして「鼻栓」や「込栓」があります。
「鼻栓」は、ほぞ先を接合材の外に貫いて出し、その先端にさして引っ張りに抗するものです。また「込栓」は、接合する二材を貫いて接合を固めるもので、「縫栓」とも言います。
竿車知栓継ぎ(やといほぞしゃちせんつぎ)【四方指し】
民家では、ほぞ指鼻栓によって梁と柱を繋ぐ架構技術 が発達しました。
梁ともに民家では柱を繋ぐ横材として、荷重支持と鴨居の役割を兼ねる指鴨居が用いられました。柱を挟んで向き合う指鴨居は敷居からの内法高さを揃えて架けられるため、ほぞに「鼻栓」を打つことが難しく、「込栓」を用いて、指鴨居と柱を繋ぐことが行われました。
下図は、奈良、江戸後期の住宅で、柱・指鴨居の竿車知による継手仕口です。
合成された「目違」(腰入目違と両目違的なもの)は竿を強化し指鴨居が捻れるのを防ぐものです。下側の突出は指鴨居の荷重を広い底面で受ける役割です。この柱は畳間四室の交点にあり、指鴨居が柱の四面に接しています。
この例のように、柱四面にほぞや竿を指し付ける仕口を四方指しといいます。
竿車知や込栓は鼻栓のように室内に突き出る要素がないため、近世の寺院建築などでもしばしば用いられました。
雇いほぞ車知栓継ぎ(やといほぞしゃちせんつぎ)
雇いほぞ車知栓継ぎも、通し柱の四方から梁が差し込まれる部分に使用されます。
向き合う指鴨居は直接継がれておらず、雇いほぞの一端は「蟻」、他端は「竿・車知」につくられています。
蟻を受ける柱側のほぞ穴は下部が、蟻先の巾に彫られ、上部が蟻形に彫られています。
組み方は、まず、雇い材の蟻形側をこのほぞ穴の下部に指し込んで上にずらして持ち上げ、蟻を噛み合わせ、次ぎに指鴨居を指し込み、指 鴨居の下方のほぞを柱のほぞ穴下部に納め、雇い材が下に落ちない状態をつくります。このとき同時に、柱から突き出た雇い材と指鴨居が継がれた形になり、そこに車知を打ち込むという仕口です。
ここで蟻をずらして接合する方法を寄蟻(よせあり)といいます。
寄蟻は桁と吊り束、梁と小屋束などの接合にも用いられました。
まとめ
これら継ぎ手は、日本の伝統的な建築や修理工事で使用されており、技術を継承するために大工さんたちが使い続けています。
弊社、丸晴工務店でも伝統技術を若い世代の大工にも伝えていけるよう、自社大工として多くの大工を育てています。
いつまでも伝統技術を守り続けていきたい。その想いで今日もお家をつくり続けています。
参考文献:誠文堂新光社「木組み・継手と組手の技法」
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https://www.marusei-j.co.jp/木造建築における木組みの継手仕口とは何?/
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