剪定が良ければ庭は20年後も変わらない。
2023年10月3日庭で四季を楽しむために、樹形のきれいな山採りの木で庭をつくったけれど、剪定はそろそろしたほうがいいのかな。難しいから庭師さんにお願いしようかな。でもお値段も高いから自分でできないかしら、、、
そんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
山採りの木は、山の中で大きな木の陰で彩光も風通しも十分ではない環境でも育つほど強健な樹種が多いため、庭で良い生育条件を与えた場合、驚くほどのスピードで生長していきます。
うかうかしていると剪定時期を逃し、あっという間に樹形が崩れてしまいます。
自分で剪定を行うならば、しっかりと剪定する時期と切る位置や切り方のコツを覚えて剪定をしましょう。
そして、美しい樹形を保ち20年後も美しいままの庭を実現しましょう。
剪定する枝と残す枝
剪定でもっとも大切なポイントは切るべき枝と残すべき枝を見極めることです。適切な剪定のポイントは、強い木の生長を抑制し、枝の数や葉の数を増やさないことです。また、放置して枝が混みすぎると、樹冠の内部に日光が差し込まなくなり、枯れ枝が出たり、害虫の発生が多くなります。不要な枝を間引き、伸びすぎた枝を切り戻して、健全な生育を助け、木が大きくなりすぎないようにコントロールします。
剪定する枝
徒長枝
少し離れた場所から木の全体を見るとわかりやすいのですが、明らかにビョーンと飛び出して伸び、節間 がほかの枝よりも広く、不自然に太いの力徒長枝です。 そのままにすると、どんどん徒長枝ばかりが太く長く伸びてしまい、やがてゴツゴツして風情のない枝振りになります。 ほかの枝の養分までが、一気に徒長枝に集中してしまうため、木全体のバランスを損ない、しなやかな姿を台無しにしてしまいます。
開花前や梅雨時の病気になりやすい時期を除き、徒長枝があまりにも勢いよく伸びる場合は、そのまま放置せずに早めに切り取ります。あっというまに、驚くほど伸びてしまうこともあります。 切るときは、必ずつけ根ギリギリで切り取り、「枯れ込んだらどうしよう」などと思って残してはいけません。少し残したりすると、そこから噴くように小枝が出てきて、切り直すことになります。切り口の回復が心配なら、癒合剤を塗っておきます。
下垂枝
下向きにダランと垂れ下がるように伸び、ほかの健全に伸びている枝に当たってしまうような伸び方をする枝があります。 落葉樹では、太い下枝から伸びることが多いのです が、常緑樹では樹冠内部のさまざまな箇所に発生し、 多くはやや細めで枯れやすく、放っておくと傷んで 病害虫の温床になってしまうこともあります。 放置すると、病気や害虫の被害が拡大する恐れがありますので、 残さずにつけ根から切り取ります。
車枝
1ヵ所を中心に噴き出すような小枝が出てしまう車枝は、その枝がもともと樹勢の強い徒長枝だったり、台風や雪などの何らかの外的要因が加わり、途中で折れたり曲がった場合などに多く見られます。
不自然な向きで出た枝をすべて、残さずにつけ根から切り落とします。また、根本的な解決策として、その枝全体を主幹から切り落とすのも有効です。少し残してしまうと、そこからまた不要な枝が勢いよく出ることが多いので、必ず残さずにつけ根で切りましょう。
樹冠の内側に向かって逆らうように伸びる内向き枝、ほかの横枝にぶつかって垂直に伸びようとする立 ち枝、左右対称に伸びてしまうかんぬき枝などは、車枝と同様に樹冠内部の自然な流れを乱す不要な枝です。
樹冠の内部で枝と枝がぶつからずに、風通しがよい状態に手入れしたいので、このような枝も必ずつけ根 で切り落とし、しなやかな枝振りに整えます。
残す枝
ひこばえ
主に低木や中高木で株立ち状に育つ樹種は、古く太くなった幹は地際で切り取り、下から出てきたひこば えを伸ばして、新しい幹として利用します。 従来の庭木の手入れの本の多くは、「ひこばえは伸びたらすぐに切れ」と書いてあるものが多いのです が、しなやかな自然樹形に手入れするためには、ひこばえこそ、活かさなければならない要素です。
株元から多くのひこばえが出やすい樹種の場合、1シーズンで5本ものひこばえが伸びることがあります。
まったく出ないと困りますが、必要以上によく出 すぎたら、伸ばすものを選び、残りは地際ギリギリで切り取って整理します。このとき、短く残したりすると、そこからさらに細い枝が噴き出すので、必ず残さずにギリギリで切り落とします。 樹勢が強すぎるものと細く弱いものは、木全体の生育のリズムを乱すので切り取ります。樹勢が強くも弱くもない中庸の育ち具合で、姿のよいものを選んで残し、大きく伸びたら、古くなった幹と更新します。
胴吹き枝・ふところ枝
株元からひこばえが生えにくく、一本立ちになりや すい高木類の樹種で、主幹を低く切り戻したいときに は、幹の下方1/2~2/3の位置あたりから伸びてくる胴吹き枝を活かし、伸ばして利用します。 主幹に沿って、やや立ち気味のほうが好都合ですが、 もし、横に伸びていても、主幹を胴吹き枝のつけ根で 切り落とすと、上に向かって徐々に立ち上がります。 明らかに伸ばしても利用できない胴吹き枝が伸びた場合は、幹の際から残さず切り取ります。
枝を切る手順
1、全体のバランスをイメージする
実際に剪定をする場合、多くの人がまず樹冠の外部の目につく不要な枝から切り始めますが、これはよくありません。
切りすぎると元に戻せないので、手をつける前に全体の姿をよく観察し、どの枝を切 ったらバランスのとれた姿になるかをじっくりと判断します。
2、主となる枝などの剪定
主幹を切り戻したり、地際から切る場合は、最初にその作業を行います。次に残す主幹から伸びる不要な太い枝を間引くと、目指す樹形の骨格が見えてきます。
太い枝をつけ根ギリギリできれいに切るには、下の図の手順で行ってください。
その後、中程度の太さの枝の剪定に移ります。
3、小枝の剪定
先までは、ノコギリの作業ですが、最後はハサミを使った小枝の剪定です。
作業は頂部から順に上から下へ進めます。
これは、先に下方の枝を綺麗に整えたのに、上方から切りカスが降り積もってしまい清掃作業が二度手間になってしまうからです。
枝を切るポイント
一般に今までの剪定方法で手入れをしていた人は、 「切り口から枯れ込んだら、 どうしよう」と不安になり、 下の左の図のように、 少し枝を残してしまうことが多いと思います。すると、残した部分から 一斉に枝が噴き、 樹形は乱れて 「この噴いたたくさんの小枝をどうしよう?」 と慌てがちです。 ハナミズキやヒメシャラなどで、よくこのような例を見かけます。解決するには、 もう一 度残した部分をつけ根から切り直すことですが、 時期がその樹種の剪定にふさわしくない場合は、 適期まで待って作業します。 ただし、 ブドウやアジサイなど、 あらかじめ枯れ込みやすいことがわかっている樹種は、 その分を考慮して少しつけ根から離して切りましょう。
剪定する時期
落葉樹(アオダモ・アオハダ・カエデ・ツリバナ)
通常、落葉樹の剪定は冬季または初春が適しています。
木が休眠状態にある時に行うと、新芽が出る前に剪定を行うことができます。
冬は植えつけや病害虫の防除など、 翌年の備えをする重要な時期です。手を抜くと春以降の生育に差が出てしまうので、 必要な作業をしておきます。
春から夏に花が咲く樹種には、 厳寒期に寒肥を施します。おすすめは、 油かすと骨粉などを混ぜて練り込んだ固形の有機質肥料か、 緩効性の粒状化成肥料です。ただし、 量はこく控えめに与え、 数ヵ所に分けて土に埋めるか、土にばらまいてからよく混ぜて与えます。
夏の剪定は、 伸びすぎた枝や混み合った枝を切って間引き、 調整するのが目的です。うっとうしいからといって伸びが止まる前に剪定すると、 勢いよく枝葉が出てくるので避けましょう。ある程度、 新芽や不定芽の伸びが止まったところで枝を間引き、 葉数を調整すると、 枝の太りを抑えられます。
常緑樹(*ツツジ・シャクナゲ・ヤマモモ)
*種類によって落葉樹・常緑樹あり
常緑樹は落葉樹に比べて芽生えの時期が遅くなります。剪定の基本は、新葉が出そろう6~7月ごろに、枝を主幹のつけ根から間引いて自然な樹形に整えます。また、寒さに備えるため、秋から厳寒期を迎える前までに枝葉の数を減らしておきます。花を楽しむ木の場合は、落葉樹と同じに花芽分化の 40~50日以前に行うのが剪定の原則です。 常緑の広葉樹には落葉樹よりも寒さに弱い樹種が多くあります。これらは盛夏と厳冬期を除いた暖かい時期に植えつけを行います。
針葉樹は、広葉樹よりも寒さに強い樹種が多く、冬の間に剪定で樹形を整えます。芽吹き前までには、翌年の生長する予測をしながら、樹種ごとの伸び方をよく考えて大きさをコントロ ールします。
常緑樹はシャクナゲやツバキなどの花を楽しむもの以外は、大きくなりすぎたり間延びするので、ほぼ肥料は与えません。寒さに弱い樹種には、冬前に株元へ敷きワラや腐葉土をマルチングして保護します。
まとめ
庭で四季を楽しむためにつくった庭を、樹形のきれいなまま楽しむためには樹木の性格を知り、その樹木の負担のかからない方法や時期で剪定を行うことが何よりも大切です。
大きくなりすぎてしまった木や太い木を剪定するには、専門家の知識や技術が必要となりますので、無理をして剪定を行わず、必ず専門の庭師にご相談ください。
20年後も美しいままの庭木ライフを楽しむために、大事に大事に樹木を育ててあげてください。
参考文献:講談社「手入れがわかる雑木図鑑」https://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000012407
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