屋根材の「瓦(かわら)」ってどんな特徴があるか知っていますか?
2023年4月13日お家づくりの打ち合わせが進んでくると、屋根はどんなふうにしましょうか?
という話になってきますよね。
色々見てみるけど、やっぱり何がいいのわからないなぁ、、、という方も多いのではないでしょうか?
ここでは、昔からある屋根材の 瓦の特徴やメリットデメリットをお伝えし、理解を深めていただけたらと思います。
目次
屋根の歴史
日本各地の伝統的民家は屋根のかたちに特徴がよくあらわれています。
屋根をみればどの地域のものかおおよその見当がつき、茅葺き屋根は,北日本のものは屋根曲線がキツく鋭い。これに対して南日本のものは丸みを帯びていて柔らかさを感じさせます。このような違いは、屋根の葺き方や技術、用いる材料の違いなどとともに、それぞれの地域の風土と文化を反映しています。
かつては屋根材料としての茅は全国のどこにでもあったため、茅葺きの家が圧倒的に多くありました。
ちなみに、「カヤ」という学名の植物はなく、アシ、スギ、カリヤス、ススキなどを屋根葺き材料としたときに、これらの植物はすべて茅になります。
農家は茅葺きが普通でしたが、18世紀中頃になると一部の農村の家に瓦茸きがあらわれます。
三重県上野市の町井家は延享元年(1744年)の桟瓦葺き、庇は本瓦葺きの建築であり、農家としてはもっとも早い瓦葺きの例でした。
瓦屋根
瓦の歴史
瓦は、古代から建築材料として使用されてきました。最初期の瓦は、地元の素材である粘土や泥を形成して乾燥させたものでした。
初めて瓦が作られた説には、いくつかの諸説があります。
中国の説では、約4000年前に瓦を作ったという記事が中国の古文書『古史考』にあるということから、これを起源とする説。
またメソポタミア説では、紀元前3000年頃にはエジプトやメソポタミアなどの古代文明で瓦が使用されていたとされています。古代エジプトでは、ナイル川の粘土を用いて、屋根や壁などに瓦を使用し、古代メソポタミアでも同様に、日干し煉瓦や粘土瓦を使用していたとされています。
その後、瓦の使用は世界中に広がり、瓦の形状や種類も多様化していきました。
日本で初めて瓦が葺かれたのは
日本で初めて建物の屋根に瓦が葺かれるようになったのは、 今から約1400年前 の昔、 飛鳥の飛鳥寺(法興寺)造営時に朝鮮の百済から寺院建築の技術と共に瓦 作りの技術が伝えられたことによるとされています。
『日本書紀』によれば崇峻元(588)年に4人 の「瓦博士」が渡来したと記されており、後に飛鳥寺は平城遷都とともに、元興寺(がんごうじ)として奈良の地に移されました。
桃山時代
桃山時代になると、戦国の武将達によって火に強い 瓦が城に使われるようになりました。
安土城の瓦は明の製瓦法(中国明代に開発された陶器製造技術)を伝えたもので、この技術の特徴は、瓦を製造するために、木型と粘土との間に雲母粉を使い、瓦を燻して焼く(燻し瓦)方法で、型を使用して一定の形状に成形するものでした。この製法は、瓦の形状やサイズを一定に保ち、効率的な生産を可能にしました。
この明の製瓦法は、中国の建築や都市化の発展に大きな役割を果たし、現代でも中国や東南アジアなどの地域で使用されています。
江戸時代
江戸時代において江戸の武家屋敷は瓦葺きであった 一方、一般庶民の家は「禁行令」のもと板葺きや昔ながらの草葺きであった上に町家が建て込んでいたために火災に見舞われました。
それでも幕府は民家は当然のこと、国持大名に土蔵以外の建物の瓦葺きを禁止していました。
しかし、この「禁行令」も60年程で廃止され城郭や寺、武家屋敷に限られていた瓦屋根は民家にも使われるようになっていきました。
瓦の形
現代でも、瓦は建築材料として広く使用されています。しかし、近年では、環境に配慮した建材の需要が高まる中、瓦に代わる材料が研究され、開発されています。
日本の瓦にはいくつかの形で出来てますが、代表的なものには以下のようなものがあります。
本瓦(ほんがわら)
伝統的な日本の陶器瓦で、赤や茶色などの色があります。
平瓦と丸瓦を交互に組み合わせて並べる葺き方を本瓦葺き、又は本葺きとも呼び、その材料が本瓦となります。
裏瓦(うらがわら)
裏瓦は屋根の裏側に使われる瓦のことを指します。裏瓦は、主に雨漏りや風雨による飛散物から屋根を守るために使われます。また、裏瓦には、屋根の通気性を確保するための役割もあります。
棟瓦(むながわら)
屋根の棟(むね)に使用する瓦で、形状が特徴的です。
以上のように、日本の瓦には様々な形があり、それぞれの役割があります。
また、製造方法や材料によっても瓦の種類が変わります。
瓦の種類
いぶし瓦
炭火で表面を燻して作られるため、独特な風合いがあります。黒瓦、銀色瓦とも呼ばれ、よく焼成されたものはいぶし銀のような色と独特なつやをもち、その風合いは時間が経つにつれて増していきます。
また、燻すことで表面に膜ができ、風雨や紫外線から保護され、膜ができることで燃え広がりにくくなり、防火性が高くなります。そして、自然素材で作られているため、環境に優しく、廃棄物も出ません。耐久性があり長期間使用を期待することができます。
釉薬瓦(陶器瓦)
土や粘土を原料とした天然素材を原料として製造された瓦で、軽くて強度があります。
釉薬を塗ることで瓦にツヤを与えることができるだけでなく、好みの色に仕上げることができ、種類が多いことも釉薬瓦の特徴です。また、優れた断熱性を持ち、表面が滑らかで密度が高く、雨や湿気を防ぐ防水性高いため、屋根や壁面に使用されます。
セメント瓦
セメントを原料とした瓦で、比較的安価であり、耐久性が高いため、住宅やビルの屋根や壁面に使用されます。
他の瓦とは違い、焼かずに仕上げるため、製造中の縮みがほとんどなく、ほぼすべての瓦が無駄なく使えるというメリットがあります。
スレート瓦
粘板岩を原料とした瓦で、防水性が高く、美しい光沢があります。主に屋根瓦として使用されます。
素焼き瓦
粘土で瓦の形を作り、そのまま焼いたものを「素焼き瓦」と呼びます。
赤みが強いため「赤瓦」と表現されることも多いです。独特の赤みから洋風建築と相性が良く、南欧風の建物に合わせてテラコッタ瓦やスパニッシュ瓦と呼ばれることもあります。S字形をした瓦で、屋根の表面積が少なく、美しい外観が特徴です。
日本三代瓦
瓦は、その土地土地で取れる素材を使い、その土地ならではの瓦を生産してきました。
その中でも日本三代瓦として、有名な産地があります。
三州瓦
三州瓦は、愛知県西三河地方で主に生産される瓦の総称で、この地方の旧国名「三州」に由来します。
この地域では、瓦に適した良質な粘土が大量に採れ、又配合粘土、釉薬、窯業機械などの関連産業が集積し、瓦産業が発達してきました。
形状・色彩の多様化、使用する場所に応じた細分化、手造り技術の蓄積など、日本の屋根の伝統文化を継承しながら、機能的進化し続けており、現在では全国の粘土瓦生産量の約70%を占める最大産地となっています。
約1150度の高温で焼き締められた三州瓦は耐久性に優れ、焼き物ならではの質感が生み出す、美しさ・高級感などデザイン性も高く評価されています。(三州瓦工業協同組合)
淡路瓦
「淡路瓦」は、兵庫県淡路島で生産される400年の歴史を持つ伝統的な屋根瓦のことです。
淡路瓦は、「なめ土」と呼ばれる粒子の細かい粘土がいぶし瓦に適しており、いぶし瓦の生産量は全国一を誇ります。
淡路瓦の焼成温度は1000℃前後と三大瓦のなかでは最も低いですが、高温で焼かれた瓦なので防火性も十分あります。(淡路瓦工業組合)
淡路瓦のできるまで
石州瓦
島根県西部の石見地域で生産される石州瓦。日本第2位の生産力を誇る地場の伝統産業です。
山間部は雪深く、日本海に面した町は日本海の荒波にさらされ、しばしば台風の通り道になる石見地方。
東西南北で様々な環境変化がある土地は珍しく、この環境の中で作られた石州瓦は様々な頑丈さをもつように400年前から作られ続けています。
石見地方の町並みを見ると、赤茶色の屋根がたくさんあることに気がつきます。石州瓦の特徴、釉薬瓦の町並みです。(江津市 地場産業振興センター)
瓦のメリットデメリットは?
これまで述べた特徴をふまえると、
1000℃を超える高温で焼かれた瓦は、熱に強く万が一の火にも耐火性能を発揮してくれるでしょう。
また、雨の多い日本では防水性が最も重要ですが、瓦屋根は裏に回った水が表に排出される仕組みになっており、防水性に優れており、裏瓦で屋根の通気性を確保してくれるので室内の結露防止にもつながります。
そして、今最も騒がれている断熱性ですが、瓦は直射日光を反射し、熱を吸収しないので室内への外気の影響が少ないと言えます。
そして何よりも、美しい外観です。
これは、最近建てたお家の外観で、一文字瓦と言って軒先をきれいに揃えたディールの瓦葺きになります。
日本人ならば、これを見て美しいと思わない人はいないのではないでしょうか?
デメリットとしては、重量があるため、強度の低い建物には設置できない場合や施工に時間がかかるため工期が長くなる場合があります。
そして、イニシャルコストは他の屋根材より高くなることが多いですが、耐久性が50年以上あることを考えると、ランニングコストやメンテナンスコストとの比較で安価になる場合も考えられます。
メリットデメリットを知った上で、他の屋根材と比較して考えてみるのもいいですね。
参考文献:建築資料研究社「和風建築シリーズ”屋根”」
その他の屋根材、ガルバニウム鋼板はこちらのブログ
https://www.marusei-j.co.jp/外壁材のガルバニウム鋼板について/
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