はじめに
石灰山の石、海の貝や珊瑚、そして、海藻と麻と紙、
それらを原材料とするのが漆喰です。
そのおだやかな白い壁は、飛鳥の昔から、建物と人を守ってきました。
コンクリートや化学製品のように強靱ではなく、クロスや塗装のように手軽ではありません。
しかし、その壁に包まれるさわやかさ、年月を経るごとに増す自然な味わいは、ほかでは得ることのできないものです。
漆喰あるいは石灰を使った左官の技法はさまざま。
その伝統と新たな可能性をどうぞ知ってください。
漆喰の歴史
漆喰の歴史はとても古く、日本だけではなく世界中で使われてきました。
今から5千年前、エジプトのピラミッドの壁に使われたのが漆喰の起源です。
ピラミッドの他にも、古代ギリシャやローマ時代の建築物にも使われていたことが、 アクロポリスの神殿やポンペイの遺跡から判明しています。 これらの文明では、漆喰は絵の具を石灰に染み込ませて壁を装飾する手法に用いられました。
これが後に、イタリアルネッサンス時代のフレスコ画として確立されました。
あの有名な、1495年に制作されたレオナルドダビンチの名作「最後の晩餐」の下地も漆喰です。 その後、壁を装飾するだけではなく、壁全体を覆う壁材へと進化し、様々な建築物に盛んに使われました。
それから、シルクロード、中国、1300年前の日本へと、漆喰は渡ってきました。
飛鳥時代、奈良の高松塚古墳やキトラ古墳などに使われ、 奈良時代初期の壁工事には主に白土が上塗りとして用いられましたが、奈良時代後期から平安時代初期にかけて漆喰塗りの上蔵が造られるようになります。しかし、漆喰は多最の燃料を必要とする石灰や米粥の糊分を用いるため、大変高価な仕上げであり、寺院や貴族の宮殿などのごく限られた建築に採用されたにすぎなかった。 桃山時代に鉄砲が伝来すると、この新たな武器に対抗する必要から城郭が石組・塗壁・瓦葺きとなり、外壁は防火や防弾を目的とした厚い土壁で施行されるようになりました。
平安時代など、セメントが無い時代に高級建材として広まり、様々な建築物に使われるようになりました。
戦国時代には、漆喰の優れた防火性と耐久性が認められ、城郭建築に使用され、 その中の1つ、姫路城は漆喰壁の白さから「白鷲城」と呼ばれ、今でもなお、世界遺産として、その輝きを放っています。
江戸時代以降は、お城以外にも商人屋敷の土蔵や神社仏閣、 明治維新後には鹿鳴館などの洋風建築物にも漆喰が取り入られました。 現代もなお、それらの建築物は丈夫に姿を残しています。
そもそも漆喰「しっくい」ってなに?
石灰石の主成分は炭酸カルシウムです。これを焼いたのが生石灰(きせっかい)で酸化カルシウムです。
これを水で消化させると、高熱を出しながら消石灰になります。これに糊やスサを混ぜたものが一般的な漆喰です。
「貝灰」かいばい SHELL ASH
石灰石を焼くより早くから使われていたのが、貝殻を焼く貝灰です。桜灰とも呼ばれます。
これには、牡蠣、しじみ、アサリ、赤貝など、さらに、ドブ貝などの淡水貝も使われました。質がいいのは牡蠣灰だとされています。
このほか、和歌山、鹿児島、沖縄、奄美諸島では珊瑚を焼く珊瑚灰もありました。
貝殻はたやすく手に入れることができ、700度くらいと、石灰石よりも低温で焼けます。古くは地面を掘って流木で焼いて、それを水で消化して粉末状の消石灰を得ます。
石灰石を焼いた石灰に比べて比重が軽く、強度は低いのが貝灰の特徴。また、貝灰でつくった漆喰壁は亀裂や割れ目が生じにくいといわれています。石灰と混ぜて使われることもあり、その方が施行しやすいともいわれていました。
色はピンク、黄色、グレーがかったものなどさまざまであり、ホタテがもっとも白いです。
石灰より光沢がやわらかでやさしく仕上がるという意見もあります。また、漆喰を練った次の日、貝灰だと糊を補充しなくてよいといいます。
貝灰の工場は、海に近い川沿いにあることが多く、かつてはさまざまな地域で焼かれており、地場の需要に応えていました。しかし現在、貝灰を製造しているのは数社で赤貝を使われていることが多いそうです。平貝などに比べて赤貝は丸みを帯びているため、空気の通り道ができて、均一に焼けやすいといわれます。
貝灰が使われなくなってしまった理由は、石灰石による石灰が安価に手に入るようになったこと、そして貝は積み上げておいたときや焼くときのにおいが嫌われ、住宅地に近い場所だと操業ができなくなってしまったからだといいます。
一方では、もともと貝殻は捨てられるものであり、再生可能な資源でもあるから、リサイクルという意味で注目されつつあります。養殖によって大量に出されるようになったホタテの貝殻を用いて左官材料にしている例もあります。
この場合は、伝統的な製造、使用方法が踏襲されるのではなく、調湿性や有害化学物質の分解といった機能性がポイントとなっているようです。
「石灰」せっかい・いしばい LIME
漆喰に使われる消石灰は、石灰石を焼き(生石灰)、水を加えて消化(水和反応)させて得られるものです。
はるか昔、海中や海底の生き物の遺骸が堆積(たいせき)し、隆起して陸地となったのが石灰岩。
貝や珊瑚と石灰石は、時間のスケールを大きく、地球規模で捉えてみれば仲間だということです。
石灰石は、資源の少ない日本で自給できる唯一の資源とされ、全国に広く分布し、埋蔵量も豊富です。 石灰はアルカリ性であり、酸性の中和、不純物の除去、水和発熱性、脱臭、殺菌などさまざまな特質をもちます。
その用途は幅広く、鉄の精錬、セメ ントの原料、肥料や飼料の原料、水の浄化や汚泥処理、酸性土壌の改良、化学品の中和、水害時の防疫、ごみ処理場の排ガス浄化、砂糖の精製、こんにゃくの凝固剤などです。
身近なところで は、運動場のライン、乾燥剤、 日本酒の自動燗付けにも使われています。
全体の生産量からすれば、漆喰に使われる 消石灰は極めてわずかなものです。
工業用と左官用の石灰づくりは、規模も異なります。
現在、主流となっている工業用の石灰は、重油を燃料とし、近代的な大型石灰焼成炉において強制通風環境で焼成されるが、 左官用の消石灰には、昔ながらの塩焼き法が適しているとされています。これは、 トックリ型の 土中窯に石灰石と石炭を交互に入れ、工業塩を散布し、900度~1200度で半日ほどかけてゆっくりと焼成するものです。
焼き上がったものは下部から取り出します。これが生石灰で、原石の半分くら いの重さになっています。 生石灰10トン に対し、水を3000~3300リッ トル加え、熟成させると粉末状になります。これが消石灰です。
生石灰を藁でつくった俵に入れ、倉庫内に長期間放置し、大気中の湿気を吸収させることによって自然に消化さ せ、「改良灰」と呼ばれる消石灰をつくる地域もあった。粒は均一ではないものの品質がよいとされるが、つくるのに時間がかかるため、現在では特別な場合を除き、つくられていません。
生石灰を消化させるとき、多量の水を用いることによって、ペースト状に したのが「生石灰クリーム」と呼ばれ るものです。水を加えた時点ですでに消石灰に変化していますが、強度が出る、磨きに適しているなど、消石灰とは別の特徴をもつといわれている。現場で生石灰を消化させて生石灰クリームをつ くり、独自のレシピで材料を調合する左官もいます。
ヨーロッパではこの生石灰クリーム 長期間熟成させ、砂を混ぜたものが、 壁の材料として使われてきました。これに対して日本の主流は、消石灰に糊とスサを混ぜる漆喰です。
なぜ、そのような発展をしたのか不思議な気もしますが、生石灰自体は水を加えると発熱し、火災の危険性をもつ ため、流通にのせにくい素材だったためだといいます。
「糊材」のりざい MARINE PLANTS PASTE
糊は日本独特の左官材料で、中国にはあったとされるが、西洋にはみられないものです。奈良時代の文献に、当時は米粥が使われていたとあり、海藻を煮た液体が使われるようになったのは江戸時代からといわれています。米粥より安価なことから広く普及し、一般的に漆喰に欠かせない材料です。
糊をまぜる主たる目的は、材料の伸びを良くし作業性を良くすることと、塗りつける材料の水持ちを良くすることです。水持ちが悪いと早く乾燥したり下地に水気を奪われたりして固まってしまい、鏝(こて)をあてていられる作業時間が短くなってしまいます。水引き(水分を奪われること)を遅くできれば、壁をさわっていられる時間が延び、施工がしやすくなります。
素人なら誰でも思うのが、糊に壁を固めたり、強くする効果はないのかということです。しかし、漆喰が固まるのは石灰のためで、糊に期待されるのは先述した効果だけ、と言われています。
しかし、千葉県で海藻糊を販売する吉田鉄五郎商店の吉田鉄太郎さんは、「まだまだ学理的に解明されていないことも多いのでは」と語ります。
漆喰の中の糊分自体は時間が経つと石灰に同化し消えてしまう。しかし、高松塚古墳など、長い時間残っている漆喰のいくつかに海藻の胞子が見られるといいます。つまり、丈夫さに海藻糊が寄与していないとは言い切れないのではないかということです。海薬に含まれヨード、ミネラル、金属など陸上植物にはない成分が、石灰と結びつくことで、漆喰を強くしているのではないか、と吉田さんは話します。左官・久住章さんも、糊を入れるとドライアウト(早く乾燥しすぎて固まらないこと)を起こさないし、漆喰が堅くなる効果はあると言います。
さて、海藻は収穫されると筵俵(むしろだわら=わらで編んだ敷物で作った俵のこと)に詰め、蔵囲いといって蔵で熟成され、古いもののほうがよいとされます。それを焚いてふるって使用します。
代表的な糊用海藻に、銀杏草とツノマタがあります。銀杏に似た形のものを銀杏草、巻きが強く角のような形をツノマタというとされますが、実は海藻の分類は単純ではありません。
日高、釧路や青森東部、岩手北部では銀杏草である海藻が、岩手中南部、房総あたりではツノマタの形になります。
「銀杏草のほうがツノマタよりゼリー分が少ないのでプリプリせず施工しやすいけれど、和歌山や熊本ではツノマタのほうが好まれる」(吉田さん)というように、少々の違いはあるようですが、ほぼ同じものと見ることもできます。また、板ふのりは山口県萩市周辺や四国の一部で好まれる糊材だといいます。
海藻糊を蒸気浴させ乾燥・粉砕した粉ツノマタ、またメチルセルロース系やポリビニールアルコール系の合成化学糊も、最近ではよく使われています。
「スサ」FIBER BINDER
塗り壁は、乾燥して収縮するさいにひび割れを起こします。それをふせぐつなぎ役として入れられる繊維がスサです。他にも、スサの役割には、水持ちをよくすることと、鏝をすべらせて塗りやすくすることなどがあります。
基本的に漆喰に使われるのは麻スサです。
麻スサのほうが藁スサより細く、3ミリ前後の薄い仕上げ塗りである漆喰には適しています。また、藁スサのように黄色いアクが出ないため、白さを身上とする漆喰にとっては都合がいいのです。
麻スサの原料には、昔は麻でつくられていた漁網などが使われていたといいます。現在は、ロープや穀物の入っていた南京袋やコーヒー豆袋などの麻袋などが使われています。使用済みのコーヒー豆袋はブラジルやバングラデシュどから輸入されてくるそうです。
麻袋を細かく断裁し、次亜塩素酸15~20パーセント液のプールで数度晒して(さらして)、漂白します。漂白され細かくされた本スサは、仕上げの漆喰上塗りに使われますが、わたのように美しい色でふわっとしています。麻スサは、中塗りの砂漆喰や、屋根をとめたり軒などに使う屋根漆喰にも使われます。その場合はそこまでの白さは必要ないので、無漂白のものや、もっと粗いものが使われます。白毛(しらが)スサ(マニラスサとも)や屋根スサなどがそれです。またあえて未晒し(みざらし)のものを、自然な風合いとして好み、仕上げ用にも使う人もいます。漂白したものより繊維が強いという長所もあります。通常販売されているものより短く切った麻スサを求める人もいるようです。
その理由として、少し高くついても、混ぜやすく時間がかからないことをあげています。また、短いほうが1本のスサに絡む泥の量が少なくなるので、泥が収縮するときにスサを引っ張る力が相対的に減る。つまり同じ太さならば短い方がつなぎ役としての負担が少ないわけで、結果的に割れにくい壁になるといいます。
もっと上等な漆喰で純白の仕上がりを目指す場合には、もっと繊維が細かい紙スサを入れます。和紙を水に浸し、棒で叩いて繊維をバラバラにしたものを、漉(こ)して材料に混ぜます。以前は商家の大福帳(日々の売買の勘定を記入した元帳)などの不要になったものが用いられていたようです。
意匠的にスサを入れる場合には、上記のスサに限らず、藁なども使われます。
漆喰の仕上げとは?
左官技術は地域性による違いが大きく、漆喰も、各地でさまざまな工夫がなされてきました。調合や技法も季節や現場、職人によってさまざまで、定義は難しいですが、それがおもしろさでもあります。
漆喰仕上げにおいても、素材と技術を極め、完成度や洗練度を追求してゆく方向性がある一方で、手に入りやすい材料を使った素朴な仕上げもあります。
「おさえ」
伝統的な漆喰の仕上げの代表は、「おさえ」です。
塗った後、水引き加減を見ながら、表面を金鏝(きんごて)でおさえて仕上げます。できあがった表面は平滑で、麻スサは隠れてしまい、プレーンな白い壁となります。
「漆喰磨き」
一方、昔から最上級の仕上げとされてきたのが「漆喰磨き」。表面はさらに平滑で緻密になり、艶が出ています。
ていねいに上塗りした後、一番上にノ口という、漆喰を漉(こ)したペースト状の材料を塗り付け、磨き鏝や手ごすりで丹念に磨きをかけます。キーッという音が出て熱が出るほど手で摩擦を起こし、中の水分を出して艶を出すのです。
うまく仕上がれば、鏡のように周囲を映すほど光沢が出ます。非常に難しい技術と膨大な手間を必要とする仕上げで、左官職人にとっては腕の見せどころともいえる。
美しいだけでなく、壁面の耐水性や堅固さも向上するこの仕上げは、蔵や商家などにおいて、ステイタスの表現として使われてきました。。奈良や滋賀では、かまどの漆喰磨きも見られました。
他にも黒磨きと言われる黒の漆喰を使った「旧村山快哉堂」
店舗入口からは裏手、降り合う母屋から見れば正面にあたるところに、大坂戸と観音扉があります。
引き戸式の大坂戸には髪形の白い漆喰がリズミカルに配されています。これは鉄製の引き手を上下にずらして取り付けることで、うまく体重がのり、塗り籠めのひじょうに重い扉がすうっと開くという仕組みです。機能が見事に意匠と結びついています。
観音扉は防火扉として、いかに隙間なくおさめられるか左官職人の腕の見せどころ。
しっとりと光る黒漆喰磨きを、正確に形づくられた自の直線が引き締めます。
所在地/埼玉県志木市中宗岡5-7040-2
tel 048-473-1111(志木市教育委員会)
復元左官工事/加藤吾(加左官工業所)、宮沢喜市郎
「なでもの」「なできり」「パラリ仕上げ」
これに対して、塗りっぱなしで簡便に仕上げるのが「なでもの」「なできり」。「パラリ仕上げ」もこれにあたり、目の粗い石灰の塊が表面に浮いて小さなぶつぶつが出たものを指します。京都御所もパラリで仕上げられています。桂離宮のパラリ仕上げも有名ですが、これは表現としてのパラリで、石灰の粗い粒子をあえて入れ、鰻波もきれいに消しています。
「蛇腹引き」
「蛇腹引き」と聞いてあぁ、あれ。とわかる人も少ないと思います。
このように天井と壁の取り合い(入り隅)のところに模様のついた塗り壁のことです。
左官の古くからある左官工法で、明治から昭和初期にかけて西洋建築の装飾に対応するために蛇腹引きと石膏彫刻という技法が出来ました。蛇腹引きとは、生乾きのうちに盛り上げた漆喰又は石膏を、引き型という型を引いて装飾を施す工法です。石膏彫刻とは、元型を寒天(現在はシリコン)を用いて型取った母型に石膏を流しむ事で得られる複数の装飾品を、さらに細かな細工を施しながら壁に貼り付けていく工法です。
これを作った時のお話が、とても面白かったのでご紹介します。
https://okuno-sakan.jp/2017/07/21/蛇腹という左官仕上/
土佐漆喰
高知龍馬空港から車で東へ向かうと、独特の風貌の家が次々に現れます。土佐漆喰の外壁に水切り瓦と呼ばれる庇状のものが何段も並び、鎧のような段を壁につける鎧仕上げという手法も目につきます。土佐瓦などのどっしりした瓦と分厚い土佐漆喰を身にまとったヘビー級の家々は、どれもこれも城郭のような重厚なモノトーンとゴージャスな意匠に満ちています。
土佐漆喰は、激烈な雨風から建物を守るため、磨きに磨かれた漆喰の外壁と水切り瓦という土佐漆喰の工法が考えだされ、受け継がれてきました。土佐漆喰の仕上げの外壁は民家にも見られましたが、土蔵の外壁が多かったそうです。そのほとんどは明治、大正期に建てられたものでした。
土佐漆喰は、まず石が違い、高知県に豊富に産出する良質の石灰岩からつくられます。
焼き方も違い、今の生石灰は重油を使って強制通風で焼成されますが、土佐独特の徳利型土中窯で、自然通風で低めの温度で4日間じっくり焼きます。消化・熟成にも手間暇をかけます。
そして土佐漆喰は、普通の漆喰と違って藁(わら)スサを混ぜます。塩焼き消石灰に発酵させた稲藁を混ぜて水練りし、数ヶ月熟成させると、自然と粘り気が出ます。そのため、土佐漆喰には糊を混ぜません。
稲藁のアクのせいでかなり黄味を帯びています。塗り終わってから1年ぐらいかけて真っ白になるといいます。厚塗りと徹底した磨きと水切り瓦や鎧仕上げを施して漆喰彫刻で飾るという「土佐漆喰でつくる」工法の独自性だけでなく、「土佐漆喰をつくる」製法の独自性も際立っています。
漆喰の持つチカラとは?
消臭性
漆喰の中にはたくさんの細かい孔(あな)があり、匂い成分を吸着して無臭化する働きがあります。
日常生活で発生するペットやタバコの臭い、洗濯物の生乾き臭、生ゴミ臭など、気になるあらゆる生活臭をおさえて、室内の空気をリフレッシュすることができます。
調湿性
漆喰がもつ無数の細かい孔(あな)が、ニオイ成分だけでなく湿気も吸収・放出して快適な湿度にコントロールします。夏場は多湿のジメジメを防ぎ、冬場は過乾燥や、壁面の結露を防止してくれるので、季節に関わらず居心地のよい室内環境を保ちます。
抗菌性
漆喰の主成分は強アルカリ性です。この環境下ではほとんどの細菌・カビやウイルスが生息できないため、病気の拡散を抑制することが可能です。鳥インフルエンザや口蹄疫が発生した時に石灰をまきますが、これはウイルスを殺菌するためです。
安全性
漆喰は、シックハウス症候群の原因とされるホルムアルデヒドなどの、VOCを吸着分解します。また、クロスや合板のように化学接着剤を使用しないので、シックハウス症候群の原因物質を放出しません。
*VOC:運発性有機化会物の総称。床や壁・天井などに使われる建材や家具の接着剤、防虫剤などに含まれる有害化学物質。ホルムアルデヒド、キシレンなどが有名です。
不燃性
漆喰は、糊やスサに、わずかな有機物を含みますがほとんどが無機質で、内装制限のある室内にも*不燃材として使用できます。万一の火災時にも、有機化学物質を一切含まない為、有毒ガスを発生することもありません。
防カビ性
長期間にわたって強アルカリ性を保つ漆喰は、真菌症や真菌アレルギー症などを引き起こすカビも抗菌作用を発揮して繁殖させません。適度な換気をすることで、カビを餌とするダニの抑制にもなり、ダニを原因とするアレルギー対策に効果的です。
まとめ
今回は漆喰についてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか。
塗り壁のお話はまだまだ奥が深く、深く知れば深く知っただけ建物の深みが見えてくるのではないでしょうか。
古くからあった漆喰ですが、時代時代で使われていた材料が違っていたり、混ぜるもの、作り方など徐々に進化して、今の漆喰に辿り着いたのだと思います。現在の漆喰は、職人さんにとって塗りやすいものに変わっていってるのかも知れませんが、それでも漆喰を塗る職人さんは、下地と仕上げを含めて何度も塗っては乾かし、再度塗るというように手間暇をかけて仕上げてゆきます。そこには、職人さんの手によるものづくり。手作りの温かみというものが生まれているのではないでしょうか。
参考文献
「CONFORT 土と左官の本」建築資料研究社
田川産業株式会社(TAGAWA)https://shirokabe.co.jp
家庭科学工業株式会社https://www.kateikagaku.co.jp
丸晴工務店の漆喰にまつわる動画はこちら
https://youtube.com/shorts/z_1rYpzNjQo
丸晴工務店のブログはこちら
日本人にとって馴染み深い『畳』について知ろう