破風に設置されるこの飾りは、縣魚と書いて「げぎょ」と読みます。

”縣魚”(げぎょ)は、古典的な日本の建築で、玄関の破風(はふ)に設置される装飾的な彫刻などを指します。

これらの装飾は伝統的な日本の家屋や建物の玄関部分に取り付けられ、家の持ち主の繁栄や幸運を象徴するものとされています。通常は鯉(こい)や金魚などの魚が用いられ、縁起を良いとされるシンボルとして愛されてきました。

現在では様々な形があり、写真のようなものが見掛けられます。

はじまり

”縣魚”は、日本の建築における玄関の装飾として用いられてきた伝統的な文化で、その起源については複数の説がありますが、一般的には中国から伝わったと考えられています。

「縣魚」の由来に関する一つの説によれば、中国の伝説に登場する黄河の鯉が龍門の滝を登りきり、成功すれば龍に変身できるというものです。この伝説は成功や成長、繁栄の象徴として鯉が重要視されるようになりました。

 

日本においても、この伝説が縣魚の起源とされ、鯉は縁起の良いシンボルとして家の玄関に飾られるようになりました。

その後、鯉の他にも金魚やカワニナなどが縣魚のデザインとして用いられるようになりました。

また、日本の伝統的な文化や風習において、魚は縁起の良い動物とされており、繁栄や幸福を象徴するものとされています。そのため、建築や装飾においても縣魚は繁栄や幸運を願うシンボルとして重視され、古くから日本の建築文化に根付いています。

ちなみに、日本で最も有名な縣魚は、京都の清水寺にある三花懸魚(さんかけんぎょ)というものです。三花懸魚は、三つの花の形をした縣魚で、桜、菊、梅の花を表しています。

三花懸魚は、平安時代に建てられた清水寺の本堂の屋根に飾られており、日本最古の縣魚とされています。

 

種類

縣魚の種類は、形によって様々に分けられます。一般的には、以下の4種類があります。

猪目懸魚(いのめげぎょ)

ハート型の穴がある縣魚です。火除けのまじないとして使われました。

猪目縣魚は比較的古い形式で、鎌倉時代以前からあるとされています。

https://www.bing.com/images/search?view=detailV2&ccid=l79l3QZs&id=CA7C5AF5012C74E9579EF57D565A238BEFD3B95D&thid=OIP.l79l3QZs4tkBK6U4DTxDjQHaFs&mediaurl=https%3A%2F%2Fblogimg.goo.ne.jp%2Fuser_image%2F0f%2F0b%2Fb9eec5ffc7f740927a9fe3c1a5eaa612.jpg&exph=385&expw=500&q=猪目懸魚の画像&simid=608039903714502927&form=IRPRST&ck=2911FFDA4E2BB63C3A3F20C852B98AC9&selectedindex=27&itb=0&ssp=1&setlang=ja&cc=JP&safesearch=moderate&vt=1&sim=11

蕪懸魚(かぶらげぎょ)

ハート型の穴がない縣魚です。シンプルでモダンなデザインが特徴です。

野菜のカブに似た形をした縣魚で、寺社建築や民家に見られます。

三花懸魚(みつはなげぎょ)

蕪懸魚と猪目懸魚を合体させた縣魚です。桜、菊、梅の花を表しています。

三花縣魚は、入母屋破風や大きな千鳥破風に取り付けられ、両端から鰭(ひれ)と呼ばれる若葉や波を形どった飾りがついています。

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/92/0ffad36a29292895e02b7379961c98d2.jpg

梅鉢懸魚(うめばちげぎょ)

梅鉢縣魚とは、梅の花を図形化したもので、五角形または六角形をしています。

小さく簡素なもので、小さな千鳥破風や切妻破風などに取り付けられます。

梅鉢縣魚は鎌倉時代に現れ、現存する最古の懸魚は梅鉢縣魚です。平安時代末期の絵巻物にも描かれており、高位の貴族の屋敷にも飾られていました。

https://blog.goo.ne.jp/momosi77/e/d98980c659eef67381f019c9ece946c7

 

今回、建築中の敷地内にご両親の旧日本家屋にある「縣魚」が壊れてしまって修復して欲しいとのご依頼がありました。その修繕動画をこちらにご紹介いたします。

丸晴工務店YouTube ”日本家屋の破風に飾られる「縣魚げぎょ」を再生します。”

以前、丸晴で建てた入母屋のお家のブログをご紹介します。

https://www.marusei-j.co.jp/50年以上変わらない良さを持ち続ける家/

2023年は大変お世話になりました。

2023年も残すところ、あと5日。

本年の丸晴工務店は、

色んな人と出会い、色んな人の旅立ちがあり、

大変忙しい日々でした。

しかし、

その旅立ちと出会いがあるからこそ                    

常に良いものをつくっていけるのだと思っております。

その出会いに感謝をし、

2024年も丸晴工務店は日々家づくりに尽力して参ります。

どうぞ温かい目で見守って頂けますよう、よろしくお願い申しあげます。

 

冬季休業

2023年12月29日(金)〜2024年1月8日(月)

上記期間はお休みとさせて頂きます。

ご迷惑をお掛け致しますが

何卒よろしくお願い申しあげます。

 

丸晴工務店の最新ブログ

https://www.marusei-j.co.jp/左官工事である自然素材の漆喰/

丸晴工務店の最新YouTube

https://youtu.be/TARVOwVgLeE

左官工事である自然素材の漆喰「しっくい」を知ってみよう。

はじめに

石灰山の石、海の貝や珊瑚、そして、海藻と麻と紙、

それらを原材料とするのが漆喰です。

そのおだやかな白い壁は、飛鳥の昔から、建物と人を守ってきました。

コンクリートや化学製品のように強靱ではなく、クロスや塗装のように手軽ではありません。

しかし、その壁に包まれるさわやかさ、年月を経るごとに増す自然な味わいは、ほかでは得ることのできないものです。

漆喰あるいは石灰を使った左官の技法はさまざま。

その伝統と新たな可能性をどうぞ知ってください。

 

漆喰の歴史

漆喰の歴史はとても古く、日本だけではなく世界中で使われてきました。

今から5千年前、エジプトのピラミッドの壁に使われたのが漆喰の起源です。

ピラミッドの他にも、古代ギリシャやローマ時代の建築物にも使われていたことが、 アクロポリスの神殿やポンペイの遺跡から判明しています。 これらの文明では、漆喰は絵の具を石灰に染み込ませて壁を装飾する手法に用いられました。

これが後に、イタリアルネッサンス時代のフレスコ画として確立されました。

あの有名な、1495年に制作されたレオナルドダビンチの名作「最後の晩餐」の下地も漆喰です。 その後、壁を装飾するだけではなく、壁全体を覆う壁材へと進化し、様々な建築物に盛んに使われました。

それから、シルクロード、中国、1300年前の日本へと、漆喰は渡ってきました。

飛鳥時代、奈良の高松塚古墳やキトラ古墳などに使われ、 奈良時代初期の壁工事には主に白土が上塗りとして用いられましたが、奈良時代後期から平安時代初期にかけて漆喰塗りの上蔵が造られるようになります。しかし、漆喰は多最の燃料を必要とする石灰や米粥の糊分を用いるため、大変高価な仕上げであり、寺院や貴族の宮殿などのごく限られた建築に採用されたにすぎなかった。 桃山時代に鉄砲が伝来すると、この新たな武器に対抗する必要から城郭が石組・塗壁・瓦葺きとなり、外壁は防火や防弾を目的とした厚い土壁で施行されるようになりました。

平安時代など、セメントが無い時代に高級建材として広まり、様々な建築物に使われるようになりました。

戦国時代には、漆喰の優れた防火性と耐久性が認められ、城郭建築に使用され、 その中の1つ、姫路城は漆喰壁の白さから「白鷲城」と呼ばれ、今でもなお、世界遺産として、その輝きを放っています。

江戸時代以降は、お城以外にも商人屋敷の土蔵や神社仏閣、 明治維新後には鹿鳴館などの洋風建築物にも漆喰が取り入られました。 現代もなお、それらの建築物は丈夫に姿を残しています。

 

そもそも漆喰「しっくい」ってなに?

石灰石の主成分は炭酸カルシウムです。これを焼いたのが生石灰(きせっかい)で酸化カルシウムです。

これを水で消化させると、高熱を出しながら消石灰になります。これに糊やスサを混ぜたものが一般的な漆喰です。

 

「貝灰」かいばい SHELL ASH

石灰石を焼くより早くから使われていたのが、貝殻を焼く貝灰です。桜灰とも呼ばれます。

これには、牡蠣、しじみ、アサリ、赤貝など、さらに、ドブ貝などの淡水貝も使われました。質がいいのは牡蠣灰だとされています。

このほか、和歌山、鹿児島、沖縄、奄美諸島では珊瑚を焼く珊瑚灰もありました。

貝殻はたやすく手に入れることができ、700度くらいと、石灰石よりも低温で焼けます。古くは地面を掘って流木で焼いて、それを水で消化して粉末状の消石灰を得ます。

石灰石を焼いた石灰に比べて比重が軽く、強度は低いのが貝灰の特徴。また、貝灰でつくった漆喰壁は亀裂や割れ目が生じにくいといわれています。石灰と混ぜて使われることもあり、その方が施行しやすいともいわれていました。

色はピンク、黄色、グレーがかったものなどさまざまであり、ホタテがもっとも白いです。

石灰より光沢がやわらかでやさしく仕上がるという意見もあります。また、漆喰を練った次の日、貝灰だと糊を補充しなくてよいといいます。

貝灰の工場は、海に近い川沿いにあることが多く、かつてはさまざまな地域で焼かれており、地場の需要に応えていました。しかし現在、貝灰を製造しているのは数社で赤貝を使われていることが多いそうです。平貝などに比べて赤貝は丸みを帯びているため、空気の通り道ができて、均一に焼けやすいといわれます。

貝灰が使われなくなってしまった理由は、石灰石による石灰が安価に手に入るようになったこと、そして貝は積み上げておいたときや焼くときのにおいが嫌われ、住宅地に近い場所だと操業ができなくなってしまったからだといいます。

一方では、もともと貝殻は捨てられるものであり、再生可能な資源でもあるから、リサイクルという意味で注目されつつあります。養殖によって大量に出されるようになったホタテの貝殻を用いて左官材料にしている例もあります。

この場合は、伝統的な製造、使用方法が踏襲されるのではなく、調湿性や有害化学物質の分解といった機能性がポイントとなっているようです。

 

「石灰」せっかい・いしばい LIME

漆喰に使われる消石灰は、石灰石を焼き(生石灰)、水を加えて消化(水和反応)させて得られるものです。

はるか昔、海中や海底の生き物の遺骸が堆積(たいせき)し、隆起して陸地となったのが石灰岩。

貝や珊瑚と石灰石は、時間のスケールを大きく、地球規模で捉えてみれば仲間だということです。

石灰石は、資源の少ない日本で自給できる唯一の資源とされ、全国に広く分布し、埋蔵量も豊富です。 石灰はアルカリ性であり、酸性の中和、不純物の除去、水和発熱性、脱臭、殺菌などさまざまな特質をもちます。

その用途は幅広く、鉄の精錬、セメ ントの原料、肥料や飼料の原料、水の浄化や汚泥処理、酸性土壌の改良、化学品の中和、水害時の防疫、ごみ処理場の排ガス浄化、砂糖の精製、こんにゃくの凝固剤などです。

身近なところで は、運動場のライン、乾燥剤、 日本酒の自動燗付けにも使われています。

全体の生産量からすれば、漆喰に使われる 消石灰は極めてわずかなものです。

工業用と左官用の石灰づくりは、規模も異なります。

現在、主流となっている工業用の石灰は、重油を燃料とし、近代的な大型石灰焼成炉において強制通風環境で焼成されるが、 左官用の消石灰には、昔ながらの塩焼き法が適しているとされています。これは、 トックリ型の 土中窯に石灰石と石炭を交互に入れ、工業塩を散布し、900度~1200度で半日ほどかけてゆっくりと焼成するものです。

焼き上がったものは下部から取り出します。これが生石灰で、原石の半分くら いの重さになっています。 生石灰10トン に対し、水を3000~3300リッ トル加え、熟成させると粉末状になります。これが消石灰です。

生石灰を藁でつくった俵に入れ、倉庫内に長期間放置し、大気中の湿気を吸収させることによって自然に消化さ せ、「改良灰」と呼ばれる消石灰をつくる地域もあった。粒は均一ではないものの品質がよいとされるが、つくるのに時間がかかるため、現在では特別な場合を除き、つくられていません。

生石灰を消化させるとき、多量の水を用いることによって、ペースト状に したのが「生石灰クリーム」と呼ばれ るものです。水を加えた時点ですでに消石灰に変化していますが、強度が出る、磨きに適しているなど、消石灰とは別の特徴をもつといわれている。現場で生石灰を消化させて生石灰クリームをつ くり、独自のレシピで材料を調合する左官もいます。

ヨーロッパではこの生石灰クリーム 長期間熟成させ、砂を混ぜたものが、 壁の材料として使われてきました。これに対して日本の主流は、消石灰に糊とスサを混ぜる漆喰です。
なぜ、そのような発展をしたのか不思議な気もしますが、生石灰自体は水を加えると発熱し、火災の危険性をもつ ため、流通にのせにくい素材だったためだといいます。

 

「糊材」のりざい MARINE PLANTS PASTE

糊は日本独特の左官材料で、中国にはあったとされるが、西洋にはみられないものです。奈良時代の文献に、当時は米粥が使われていたとあり、海藻を煮た液体が使われるようになったのは江戸時代からといわれています。米粥より安価なことから広く普及し、一般的に漆喰に欠かせない材料です。

糊をまぜる主たる目的は、材料の伸びを良くし作業性を良くすることと、塗りつける材料の水持ちを良くすることです。水持ちが悪いと早く乾燥したり下地に水気を奪われたりして固まってしまい、鏝(こて)をあてていられる作業時間が短くなってしまいます。水引き(水分を奪われること)を遅くできれば、壁をさわっていられる時間が延び、施工がしやすくなります。

素人なら誰でも思うのが、糊に壁を固めたり、強くする効果はないのかということです。しかし、漆喰が固まるのは石灰のためで、糊に期待されるのは先述した効果だけ、と言われています。

しかし、千葉県で海藻糊を販売する吉田鉄五郎商店の吉田鉄太郎さんは、「まだまだ学理的に解明されていないことも多いのでは」と語ります。

漆喰の中の糊分自体は時間が経つと石灰に同化し消えてしまう。しかし、高松塚古墳など、長い時間残っている漆喰のいくつかに海藻の胞子が見られるといいます。つまり、丈夫さに海藻糊が寄与していないとは言い切れないのではないかということです。海薬に含まれヨード、ミネラル、金属など陸上植物にはない成分が、石灰と結びつくことで、漆喰を強くしているのではないか、と吉田さんは話します。左官・久住章さんも、糊を入れるとドライアウト(早く乾燥しすぎて固まらないこと)を起こさないし、漆喰が堅くなる効果はあると言います。

さて、海藻は収穫されると筵俵(むしろだわら=わらで編んだ敷物で作った俵のこと)に詰め、蔵囲いといって蔵で熟成され、古いもののほうがよいとされます。それを焚いてふるって使用します。

代表的な糊用海藻に、銀杏草とツノマタがあります。銀杏に似た形のものを銀杏草、巻きが強く角のような形をツノマタというとされますが、実は海藻の分類は単純ではありません。

日高、釧路や青森東部、岩手北部では銀杏草である海藻が、岩手中南部、房総あたりではツノマタの形になります。

「銀杏草のほうがツノマタよりゼリー分が少ないのでプリプリせず施工しやすいけれど、和歌山や熊本ではツノマタのほうが好まれる」(吉田さん)というように、少々の違いはあるようですが、ほぼ同じものと見ることもできます。また、板ふのりは山口県萩市周辺や四国の一部で好まれる糊材だといいます。
海藻糊を蒸気浴させ乾燥・粉砕した粉ツノマタ、またメチルセルロース系やポリビニールアルコール系の合成化学糊も、最近ではよく使われています。

 

「スサ」FIBER BINDER

塗り壁は、乾燥して収縮するさいにひび割れを起こします。それをふせぐつなぎ役として入れられる繊維がスサです。他にも、スサの役割には、水持ちをよくすることと、鏝をすべらせて塗りやすくすることなどがあります。
基本的に漆喰に使われるのは麻スサです。

麻スサのほうが藁スサより細く、3ミリ前後の薄い仕上げ塗りである漆喰には適しています。また、藁スサのように黄色いアクが出ないため、白さを身上とする漆喰にとっては都合がいいのです。
麻スサの原料には、昔は麻でつくられていた漁網などが使われていたといいます。現在は、ロープや穀物の入っていた南京袋やコーヒー豆袋などの麻袋などが使われています。使用済みのコーヒー豆袋はブラジルやバングラデシュどから輸入されてくるそうです。
麻袋を細かく断裁し、次亜塩素酸15~20パーセント液のプールで数度晒して(さらして)、漂白します。漂白され細かくされた本スサは、仕上げの漆喰上塗りに使われますが、わたのように美しい色でふわっとしています。麻スサは、中塗りの砂漆喰や、屋根をとめたり軒などに使う屋根漆喰にも使われます。その場合はそこまでの白さは必要ないので、無漂白のものや、もっと粗いものが使われます。白毛(しらが)スサ(マニラスサとも)や屋根スサなどがそれです。またあえて未晒し(みざらし)のものを、自然な風合いとして好み、仕上げ用にも使う人もいます。漂白したものより繊維が強いという長所もあります。通常販売されているものより短く切った麻スサを求める人もいるようです。

その理由として、少し高くついても、混ぜやすく時間がかからないことをあげています。また、短いほうが1本のスサに絡む泥の量が少なくなるので、泥が収縮するときにスサを引っ張る力が相対的に減る。つまり同じ太さならば短い方がつなぎ役としての負担が少ないわけで、結果的に割れにくい壁になるといいます。

もっと上等な漆喰で純白の仕上がりを目指す場合には、もっと繊維が細かい紙スサを入れます。和紙を水に浸し、棒で叩いて繊維をバラバラにしたものを、漉(こ)して材料に混ぜます。以前は商家の大福帳(日々の売買の勘定を記入した元帳)などの不要になったものが用いられていたようです。

意匠的にスサを入れる場合には、上記のスサに限らず、藁なども使われます。

 

漆喰の仕上げとは?

左官技術は地域性による違いが大きく、漆喰も、各地でさまざまな工夫がなされてきました。調合や技法も季節や現場、職人によってさまざまで、定義は難しいですが、それがおもしろさでもあります。
漆喰仕上げにおいても、素材と技術を極め、完成度や洗練度を追求してゆく方向性がある一方で、手に入りやすい材料を使った素朴な仕上げもあります。

「おさえ」

伝統的な漆喰の仕上げの代表は、「おさえ」です。

塗った後、水引き加減を見ながら、表面を金鏝(きんごて)でおさえて仕上げます。できあがった表面は平滑で、麻スサは隠れてしまい、プレーンな白い壁となります。

「漆喰磨き」

一方、昔から最上級の仕上げとされてきたのが「漆喰磨き」。表面はさらに平滑で緻密になり、艶が出ています。

ていねいに上塗りした後、一番上にノ口という、漆喰を漉(こ)したペースト状の材料を塗り付け、磨き鏝や手ごすりで丹念に磨きをかけます。キーッという音が出て熱が出るほど手で摩擦を起こし、中の水分を出して艶を出すのです。

うまく仕上がれば、鏡のように周囲を映すほど光沢が出ます。非常に難しい技術と膨大な手間を必要とする仕上げで、左官職人にとっては腕の見せどころともいえる。

美しいだけでなく、壁面の耐水性や堅固さも向上するこの仕上げは、蔵や商家などにおいて、ステイタスの表現として使われてきました。。奈良や滋賀では、かまどの漆喰磨きも見られました。

他にも黒磨きと言われる黒の漆喰を使った「旧村山快哉堂」

店舗入口からは裏手、降り合う母屋から見れば正面にあたるところに、大坂戸と観音扉があります。

引き戸式の大坂戸には髪形の白い漆喰がリズミカルに配されています。これは鉄製の引き手を上下にずらして取り付けることで、うまく体重がのり、塗り籠めのひじょうに重い扉がすうっと開くという仕組みです。機能が見事に意匠と結びついています。
観音扉は防火扉として、いかに隙間なくおさめられるか左官職人の腕の見せどころ。
しっとりと光る黒漆喰磨きを、正確に形づくられた自の直線が引き締めます。

所在地/埼玉県志木市中宗岡5-7040-2
tel 048-473-1111(志木市教育委員会)
復元左官工事/加藤吾(加左官工業所)、宮沢喜市郎

 

「なでもの」「なできり」「パラリ仕上げ」

これに対して、塗りっぱなしで簡便に仕上げるのが「なでもの」「なできり」。「パラリ仕上げ」もこれにあたり、目の粗い石灰の塊が表面に浮いて小さなぶつぶつが出たものを指します。京都御所もパラリで仕上げられています。桂離宮のパラリ仕上げも有名ですが、これは表現としてのパラリで、石灰の粗い粒子をあえて入れ、鰻波もきれいに消しています。

「蛇腹引き」

「蛇腹引き」と聞いてあぁ、あれ。とわかる人も少ないと思います。

このように天井と壁の取り合い(入り隅)のところに模様のついた塗り壁のことです。

左官の古くからある左官工法で、明治から昭和初期にかけて西洋建築の装飾に対応するために蛇腹引きと石膏彫刻という技法が出来ました。蛇腹引きとは、生乾きのうちに盛り上げた漆喰又は石膏を、引き型という型を引いて装飾を施す工法です。石膏彫刻とは、元型を寒天(現在はシリコン)を用いて型取った母型に石膏を流しむ事で得られる複数の装飾品を、さらに細かな細工を施しながら壁に貼り付けていく工法です。

 

これを作った時のお話が、とても面白かったのでご紹介します。

https://okuno-sakan.jp/2017/07/21/蛇腹という左官仕上/

 

土佐漆喰

高知龍馬空港から車で東へ向かうと、独特の風貌の家が次々に現れます。土佐漆喰の外壁に水切り瓦と呼ばれる庇状のものが何段も並び、鎧のような段を壁につける鎧仕上げという手法も目につきます。土佐瓦などのどっしりした瓦と分厚い土佐漆喰を身にまとったヘビー級の家々は、どれもこれも城郭のような重厚なモノトーンとゴージャスな意匠に満ちています。

なまこ壁

土佐漆喰は、激烈な雨風から建物を守るため、磨きに磨かれた漆喰の外壁と水切り瓦という土佐漆喰の工法が考えだされ、受け継がれてきました。土佐漆喰の仕上げの外壁は民家にも見られましたが、土蔵の外壁が多かったそうです。そのほとんどは明治、大正期に建てられたものでした。

土佐漆喰は、まず石が違い、高知県に豊富に産出する良質の石灰岩からつくられます。

焼き方も違い、今の生石灰は重油を使って強制通風で焼成されますが、土佐独特の徳利型土中窯で、自然通風で低めの温度で4日間じっくり焼きます。消化・熟成にも手間暇をかけます。

そして土佐漆喰は、普通の漆喰と違って藁(わら)スサを混ぜます。塩焼き消石灰に発酵させた稲藁を混ぜて水練りし、数ヶ月熟成させると、自然と粘り気が出ます。そのため、土佐漆喰には糊を混ぜません。

稲藁のアクのせいでかなり黄味を帯びています。塗り終わってから1年ぐらいかけて真っ白になるといいます。厚塗りと徹底した磨きと水切り瓦や鎧仕上げを施して漆喰彫刻で飾るという「土佐漆喰でつくる」工法の独自性だけでなく、「土佐漆喰をつくる」製法の独自性も際立っています。

 

漆喰の持つチカラとは?

消臭性

漆喰の中にはたくさんの細かい孔(あな)があり、匂い成分を吸着して無臭化する働きがあります。

日常生活で発生するペットやタバコの臭い、洗濯物の生乾き臭、生ゴミ臭など、気になるあらゆる生活臭をおさえて、室内の空気をリフレッシュすることができます。

調湿性

漆喰がもつ無数の細かい孔(あな)が、ニオイ成分だけでなく湿気も吸収・放出して快適な湿度にコントロールします。夏場は多湿のジメジメを防ぎ、冬場は過乾燥や、壁面の結露を防止してくれるので、季節に関わらず居心地のよい室内環境を保ちます。

抗菌性

漆喰の主成分は強アルカリ性です。この環境下ではほとんどの細菌・カビやウイルスが生息できないため、病気の拡散を抑制することが可能です。鳥インフルエンザや口蹄疫が発生した時に石灰をまきますが、これはウイルスを殺菌するためです。

安全性

漆喰は、シックハウス症候群の原因とされるホルムアルデヒドなどの、VOCを吸着分解します。また、クロスや合板のように化学接着剤を使用しないので、シックハウス症候群の原因物質を放出しません。

*VOC:運発性有機化会物の総称。床や壁・天井などに使われる建材や家具の接着剤、防虫剤などに含まれる有害化学物質。ホルムアルデヒド、キシレンなどが有名です。

不燃性

漆喰は、糊やスサに、わずかな有機物を含みますがほとんどが無機質で、内装制限のある室内にも*不燃材として使用できます。万一の火災時にも、有機化学物質を一切含まない為、有毒ガスを発生することもありません。

防カビ性

長期間にわたって強アルカリ性を保つ漆喰は、真菌症や真菌アレルギー症などを引き起こすカビも抗菌作用を発揮して繁殖させません。適度な換気をすることで、カビを餌とするダニの抑制にもなり、ダニを原因とするアレルギー対策に効果的です。

 

まとめ

今回は漆喰についてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか。

塗り壁のお話はまだまだ奥が深く、深く知れば深く知っただけ建物の深みが見えてくるのではないでしょうか。

古くからあった漆喰ですが、時代時代で使われていた材料が違っていたり、混ぜるもの、作り方など徐々に進化して、今の漆喰に辿り着いたのだと思います。現在の漆喰は、職人さんにとって塗りやすいものに変わっていってるのかも知れませんが、それでも漆喰を塗る職人さんは、下地と仕上げを含めて何度も塗っては乾かし、再度塗るというように手間暇をかけて仕上げてゆきます。そこには、職人さんの手によるものづくり。手作りの温かみというものが生まれているのではないでしょうか。

 

参考文献

「CONFORT 土と左官の本」建築資料研究社

田川産業株式会社(TAGAWA)https://shirokabe.co.jp

家庭科学工業株式会社https://www.kateikagaku.co.jp

 

丸晴工務店の漆喰にまつわる動画はこちら

https://youtube.com/shorts/z_1rYpzNjQo

 

丸晴工務店のブログはこちら

日本人にとって馴染み深い『畳』について知ろう

剪定が良ければ庭は20年後も変わらない。

庭で四季を楽しむために、樹形のきれいな山採りの木で庭をつくったけれど、剪定はそろそろしたほうがいいのかな。難しいから庭師さんにお願いしようかな。でもお値段も高いから自分でできないかしら、、、

そんなお悩みをお持ちではないでしょうか?

山採りの木は、山の中で大きな木の陰で彩光も風通しも十分ではない環境でも育つほど強健な樹種が多いため、庭で良い生育条件を与えた場合、驚くほどのスピードで生長していきます。

うかうかしていると剪定時期を逃し、あっという間に樹形が崩れてしまいます。

自分で剪定を行うならば、しっかりと剪定する時期と切る位置や切り方のコツを覚えて剪定をしましょう。

そして、美しい樹形を保ち20年後も美しいままの庭を実現しましょう。

剪定する枝と残す枝

剪定でもっとも大切なポイントは切るべき枝と残すべき枝を見極めることです。適切な剪定のポイントは、強い木の生長を抑制し、枝の数や葉の数を増やさないことです。また、放置して枝が混みすぎると、樹冠の内部に日光が差し込まなくなり、枯れ枝が出たり、害虫の発生が多くなります。不要な枝を間引き、伸びすぎた枝を切り戻して、健全な生育を助け、木が大きくなりすぎないようにコントロールします。

剪定する枝

徒長枝

少し離れた場所から木の全体を見るとわかりやすいのですが、明らかにビョーンと飛び出して伸び、節間 がほかの枝よりも広く、不自然に太いの力徒長枝です。 そのままにすると、どんどん徒長枝ばかりが太く長く伸びてしまい、やがてゴツゴツして風情のない枝振りになります。 ほかの枝の養分までが、一気に徒長枝に集中してしまうため、木全体のバランスを損ない、しなやかな姿を台無しにしてしまいます。

開花前や梅雨時の病気になりやすい時期を除き、徒長枝があまりにも勢いよく伸びる場合は、そのまま放置せずに早めに切り取ります。あっというまに、驚くほど伸びてしまうこともあります。 切るときは、必ずつけ根ギリギリで切り取り、「枯れ込んだらどうしよう」などと思って残してはいけません。少し残したりすると、そこから噴くように小枝が出てきて、切り直すことになります。切り口の回復が心配なら、癒合剤を塗っておきます。

下垂枝

下向きにダランと垂れ下がるように伸び、ほかの健全に伸びている枝に当たってしまうような伸び方をする枝があります。 落葉樹では、太い下枝から伸びることが多いのです が、常緑樹では樹冠内部のさまざまな箇所に発生し、 多くはやや細めで枯れやすく、放っておくと傷んで 病害虫の温床になってしまうこともあります。 放置すると、病気や害虫の被害が拡大する恐れがありますので、 残さずにつけ根から切り取ります。

車枝

1ヵ所を中心に噴き出すような小枝が出てしまう車枝は、その枝がもともと樹勢の強い徒長枝だったり、台風や雪などの何らかの外的要因が加わり、途中で折れたり曲がった場合などに多く見られます。

不自然な向きで出た枝をすべて、残さずにつけ根から切り落とします。また、根本的な解決策として、その枝全体を主幹から切り落とすのも有効です。少し残してしまうと、そこからまた不要な枝が勢いよく出ることが多いので、必ず残さずにつけ根で切りましょう。

樹冠の内側に向かって逆らうように伸びる内向き枝、ほかの横枝にぶつかって垂直に伸びようとする立 ち枝、左右対称に伸びてしまうかんぬき枝などは、車枝と同様に樹冠内部の自然な流れを乱す不要な枝です。

樹冠の内部で枝と枝がぶつからずに、風通しがよい状態に手入れしたいので、このような枝も必ずつけ根 で切り落とし、しなやかな枝振りに整えます。

 

残す枝

ひこばえ

主に低木や中高木で株立ち状に育つ樹種は、古く太くなった幹は地際で切り取り、下から出てきたひこば えを伸ばして、新しい幹として利用します。 従来の庭木の手入れの本の多くは、「ひこばえは伸びたらすぐに切れ」と書いてあるものが多いのです が、しなやかな自然樹形に手入れするためには、ひこばえこそ、活かさなければならない要素です。

株元から多くのひこばえが出やすい樹種の場合、1シーズンで5本ものひこばえが伸びることがあります。

まったく出ないと困りますが、必要以上によく出 すぎたら、伸ばすものを選び、残りは地際ギリギリで切り取って整理します。このとき、短く残したりすると、そこからさらに細い枝が噴き出すので、必ず残さずにギリギリで切り落とします。 樹勢が強すぎるものと細く弱いものは、木全体の生育のリズムを乱すので切り取ります。樹勢が強くも弱くもない中庸の育ち具合で、姿のよいものを選んで残し、大きく伸びたら、古くなった幹と更新します。

胴吹き枝・ふところ枝

株元からひこばえが生えにくく、一本立ちになりや すい高木類の樹種で、主幹を低く切り戻したいときに は、幹の下方1/2~2/3の位置あたりから伸びてくる胴吹き枝を活かし、伸ばして利用します。 主幹に沿って、やや立ち気味のほうが好都合ですが、 もし、横に伸びていても、主幹を胴吹き枝のつけ根で 切り落とすと、上に向かって徐々に立ち上がります。 明らかに伸ばしても利用できない胴吹き枝が伸びた場合は、幹の際から残さず切り取ります。

 

枝を切る手順

1、全体のバランスをイメージする

実際に剪定をする場合、多くの人がまず樹冠の外部の目につく不要な枝から切り始めますが、これはよくありません。

切りすぎると元に戻せないので、手をつける前に全体の姿をよく観察し、どの枝を切 ったらバランスのとれた姿になるかをじっくりと判断します。

2、主となる枝などの剪定

主幹を切り戻したり、地際から切る場合は、最初にその作業を行います。次に残す主幹から伸びる不要な太い枝を間引くと、目指す樹形の骨格が見えてきます。

太い枝をつけ根ギリギリできれいに切るには、下の図の手順で行ってください。

その後、中程度の太さの枝の剪定に移ります。

3、小枝の剪定

先までは、ノコギリの作業ですが、最後はハサミを使った小枝の剪定です。

作業は頂部から順に上から下へ進めます。

これは、先に下方の枝を綺麗に整えたのに、上方から切りカスが降り積もってしまい清掃作業が二度手間になってしまうからです。

枝を切るポイント

一般に今までの剪定方法で手入れをしていた人は、 「切り口から枯れ込んだら、 どうしよう」と不安になり、 下の左の図のように、 少し枝を残してしまうことが多いと思います。すると、残した部分から 一斉に枝が噴き、 樹形は乱れて 「この噴いたたくさんの小枝をどうしよう?」 と慌てがちです。 ハナミズキやヒメシャラなどで、よくこのような例を見かけます。解決するには、 もう一 度残した部分をつけ根から切り直すことですが、 時期がその樹種の剪定にふさわしくない場合は、 適期まで待って作業します。 ただし、 ブドウやアジサイなど、 あらかじめ枯れ込みやすいことがわかっている樹種は、 その分を考慮して少しつけ根から離して切りましょう。

剪定する時期

落葉樹(アオダモ・アオハダ・カエデ・ツリバナ

通常、落葉樹の剪定は冬季または初春が適しています。

木が休眠状態にある時に行うと、新芽が出る前に剪定を行うことができます。

冬は植えつけや病害虫の防除など、 翌年の備えをする重要な時期です。手を抜くと春以降の生育に差が出てしまうので、 必要な作業をしておきます。

春から夏に花が咲く樹種には、 厳寒期に寒肥を施します。おすすめは、 油かすと骨粉などを混ぜて練り込んだ固形の有機質肥料か、 緩効性の粒状化成肥料です。ただし、 量はこく控えめに与え、 数ヵ所に分けて土に埋めるか、土にばらまいてからよく混ぜて与えます。

夏の剪定は、 伸びすぎた枝や混み合った枝を切って間引き、 調整するのが目的です。うっとうしいからといって伸びが止まる前に剪定すると、 勢いよく枝葉が出てくるので避けましょう。ある程度、 新芽や不定芽の伸びが止まったところで枝を間引き、 葉数を調整すると、 枝の太りを抑えられます。

 

常緑樹(*ツツジ・シャクナゲ・ヤマモモ)

*種類によって落葉樹・常緑樹あり

常緑樹は落葉樹に比べて芽生えの時期が遅くなります。剪定の基本は、新葉が出そろう6~7月ごろに、枝を主幹のつけ根から間引いて自然な樹形に整えます。また、寒さに備えるため、秋から厳寒期を迎える前までに枝葉の数を減らしておきます。花を楽しむ木の場合は、落葉樹と同じに花芽分化の 40~50日以前に行うのが剪定の原則です。 常緑の広葉樹には落葉樹よりも寒さに弱い樹種が多くあります。これらは盛夏と厳冬期を除いた暖かい時期に植えつけを行います。

針葉樹は、広葉樹よりも寒さに強い樹種が多く、冬の間に剪定で樹形を整えます。芽吹き前までには、翌年の生長する予測をしながら、樹種ごとの伸び方をよく考えて大きさをコントロ ールします。

常緑樹はシャクナゲやツバキなどの花を楽しむもの以外は、大きくなりすぎたり間延びするので、ほぼ肥料は与えません。寒さに弱い樹種には、冬前に株元へ敷きワラや腐葉土をマルチングして保護します。

 

まとめ

庭で四季を楽しむためにつくった庭を、樹形のきれいなまま楽しむためには樹木の性格を知り、その樹木の負担のかからない方法や時期で剪定を行うことが何よりも大切です。

大きくなりすぎてしまった木や太い木を剪定するには、専門家の知識や技術が必要となりますので、無理をして剪定を行わず、必ず専門の庭師にご相談ください。

20年後も美しいままの庭木ライフを楽しむために、大事に大事に樹木を育ててあげてください。

 

参考文献:講談社「手入れがわかる雑木図鑑」https://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000012407

 

庭のお話は、他にもたくさんあります。

https://www.marusei-j.co.jp/家の植栽ってどんな木がいいのでしょうか?/

庭をつくっている丸晴動画はこちら

https://youtu.be/9FT3Ux0jT-g

庭木の水やりの仕方って意外と知られていないかも!?

庭木の水やりの仕方ってご存知ですか?

えっ!?1日1回あげればいいんじゃないの?って思われている方も多いのではないでしょうか?

いえいえ。

庭木も意外と繊細で、時期によってあげる量やあげる時間帯が違います。

なぜその時間にあげないといけないのか。

なぜその時間にあげてはいけないのか。

知ると何となくあげるタイミングやコツなどが理解できるのではないかと思います。

ぜひ、理解して庭木を美しく育ててあげてください。

水やりの大切さ

植物は約80%~90%は水でできているため、水が無くなったら枯れてしまいます。

樹木の葉は、表面にある小さい孔(あな)=気孔(きこう)を開閉させて、二酸化炭素や酸素、水などの交換が行われています。晴れた日に日光を受けると、この気孔を開き、内部の水分を水蒸気として蒸散させ、同時に熱も放出して、温度を下げます。そして、内部の水分が足りなくなると、地中にある根から水分を吸収します。大地に根を下ろしている樹木は、水のある所へ根を伸ばして水分の吸収を行います。

よって、土が水分を保有していたり、水分量が少なく乾いていたりというような、水やりの方法を行うと、良く根が張って生育が良い状態となります。

自然の中では空気の乾燥や降雨などで、気温も湿度も一定ではありませんから、土の状態や樹木の状態を良く観察して、適切に行うことが大切です。

また、日照りなどで水不足の状態が続いた場合は、気孔を閉じて、水分の減少を防ごうとします。このような状態になると、葉の温度が上昇し、葉が焼けたり、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。また、上の葉が水分を補おうとして、下の葉から水分を奪い、下葉枯れという現象となります。

このように、植物には自己を守る働きを備えてはいるものの、根から取り込める水がなくなってしまうような場所や環境では、植物は生存できませんので、このようなことにならないよう、継続的に人がお世話をしなくてはなりません。

 

水やりは根元にたっぷり

地植え直後の樹木には、2ヶ月間1日2回朝夕、木の根元にたっぷり水やりをしましょう。

冬に地植えした場合は、1週間に2日程度で大丈夫です。

たっぷりとは、水を弱く出したホースを、根元付近に置いて、ゆっくりジワジワと水を浸透させるようにし、表面だけでなく地中の根鉢や根の周りの土に水が染みこむように1分間あげ続けます。

通常の水やりにおいて、水のやりすぎは根腐れを起こす場合がある為、土が十分に湿っている場合は不要です。

ちなみに、花や葉の上から掛けるようにして水やりを行う人もいるようですが、このような仕方で水やりをした場合、花びらを多く持つ植物は花の奥に水が残りやすく、それが原因で花が腐ることもあります。

また、葉の部分が常に濡れた状態にあると、糸状菌による植物病害、いわゆる「うどんこ病」にかかる危険性もでてきます。

観葉植物などでは、あえて葉に水を与える「葉水(はみず)」という水やり方法もありますが、基本的な水やりの仕方としては、花や葉に水を与えるのではなく、土に対して水を与えるということを覚えておきましょう。

 

水やりの時間帯

水やりを行う時間帯は、植物が活動を開始する前の早朝の時間帯が最適です。

早朝が難しい場合は、夕方でも問題ありません。

しかし、夜になると、植物はほとんど水を必要としていないので、朝に水を上げるのが難しかったとしても、夕方に水をたくさんあげるようなことは避けましょう。
一晩中、土が湿った状態になってしまうと、病気の発生や根腐れにつながってしまう場合があるので注意が必要です。

植物は太陽の光を浴びて光合成を行いますが、光合成を行うには水が不可欠となっています。 そのため光合成を行う時間帯までには水をあげて活動できるようにしてあげます。そして、夜には土が乾いた状態になるのが理想的です。

 

春の水やり

春は、新芽を伸ばしたり、お花を咲かせたりする植物の成長や活動が活発な時期なので、水の量をたっぷりとあげることが大切です。春になると日中の気温も上昇してきますので、朝のうちにあげて、水の量も気温や乾燥具合などを見ながら、気温の上昇に合わせて、序々に量を増やしていって様子をみるようにしましょう。必要以上な水やりは、根腐れを引き起こすこともあるため、様子を見ながら調整をしてください。

春の水やり:1日~2日に1度、7:00~12:00

 

夏の水やり

夏の水やりで一番重要なのが、水やりの時間帯です。夏は気温が高く、とくに真夏の日中の時間帯では、35℃を超すことも多いので、人が暑い日差しで喉が渇くように、植物にも水分補給をというようにとあげてしまうと水がお湯状態となってしまい、根が弱ってしまうので、日中の気温の高い時間帯での水やりは、絶対に避けてください。

朝の涼しい時間帯に行うのが最も良いですが、難しい場合は、夕方の涼しくなった時間帯で行うようにしましょう。

朝、水やりを忘れて水枯れを起こしているような場合でも、すぐに水を与えるのは避けておきましょう。

夏の水やりでは、基本的に早朝と夕方の1日2回、ちょっと多すぎると感じるくらいの量を根元を中心とした範囲にあげてください。

夏の水やり:1日に2回、9:00までと16:00以降に

 

秋の水やり

最近では、秋でも日中の気温が夏場と変わらない時期もあり、夏の水やりの方法と特に大きな違いはありませんが、一番異なる点は、夜間の気温の変化です。

秋になると、日中は汗ばむ陽気でも、日が落ちると気温がぐっと下がってきます。気温が下がる夕方以降の水やりは、その頻度を少しずつ少なくしていくことが必要です。夏日になる日には、水やりを朝たっぷりと行い、曇りで気温の上がらない日などは、水やりを見送るというように、真夏の毎日の水やりから、序々に水やりの間隔をあけて、3か月間で毎日から3日に1回まで頻度を少なくするようにします。

 

秋の水やりは、毎日から3日に1回まで序々に減らし、7:00~12:00までに

 

冬の水やり

冬の水やりは、必要最低限にして、夕方以降は避けることが重要です。

冬の間は、気温が少し上がる午前9時頃に行うことと、夜間の凍結を避けるために夕方以降は行わないようにしましょう。この時期の樹木は多くの水を必要としません。地植えでは水やりはほとんど必要ありません。

冬の水やりは、1週間に1回程度、9:00頃に

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

庭木が活動を始める前に、水をやり、活動のない夜は控える。

真夏の暑い時期は水は暑くなってしまうため日中は避ける。

理屈を知ると、いつ水やりをするべきなのか必然とわかってきます。

庭木は生き物なので、放っておけば自然に育つではないのです。

手をかけて植えたのならば、手をかけて育ててあげましょう。

庭木の様子を見ながら、害虫にも気をつけて見守ってあげてください。

そして、美しい庭木を見ながら心豊かな暮らしをしていけたらいいですね。

 

害虫に要注意!こんなブログも書いています。

https://www.marusei-j.co.jp/テッポウムシとカミキリムシって?生態と予防と/

 

丸晴工務店で作る庭づくり動画

https://youtu.be/9FT3Ux0jT-g

 

丸晴工務店の夏季休業をお知らせします。

 

 

平素より格別のお引き立てを賜り暑く御礼申し上げます。

誠に勝手ながら、下記の期間を下記休暇とさせて頂きます。

皆様にはご不便をおかけ致しますが、何卒ご了承いただきますようお願い申し上げます。

 

夏季休暇期間

2023年8月11日(金)〜16日(水)

 

 

日本人にとって馴染み深い『畳』について知ろう

今回のブログでは私たち日本人に身近な畳についてお話しします。

畳と一口にいっても種類や敷き方などにはさまざまな違いがあります。

昔から使用されてきた畳ですが、最近では和紙でできた畳を使われる方も増えています。

それぞれの畳の特徴などをご紹介し、理解を深めていただけたらと思います。

畳の歴史

中世・近世では、居室の床は板敷きが標準であり、将軍や大名は、置畳といって広い部屋の一部に寝具や座具として畳を置いて使用していました。室町時代に書院造りが完成されてからは、小さな部屋から室内全面に畳を敷き詰めるようになり、置畳と区別して敷畳と呼ばれるようになりました。

 

畳の敷き方

畳を1室に敷き詰める場合の社会的な慣習を畳敷様(たたみじきよう)といいます。

婚礼などの祝い事では祝儀敷とし、逆に葬儀などの不祝儀の際には不祝儀敷とされます。畳を敷き替える風習は江戸時代頃から始まったといわれ、畳職人の間では、畳の敷き方に対して枕敷、回し敷、四居敷、縁敷などの呼び分けがあります。

 

畳の構造

畳床(たたみどこ)

畳の台となるもので、材料によって藁のみを使用する藁床、藁の間にポリスチレンフォ ームなどを挟んだサンドイッチ畳床、藁をまったく使わない建材畳床の3種類があり、サンドイッチ畳床と建材床を化学床と呼ぶこともあります。

藁床は、よく乾燥させた稲藁を植物油に浸した麻糸で締めながら縫い刺したもので、感触がよく丈夫で復元力がある点が化学床と比べて優れています。藁は縦横に積み重ねて糸で締められますが、この藁を3層に重ねたものを三段配、5層のものを五段配といい、 畳床の品質は重量があるほど、糸締めの縫目距離が短いほど上等品とされています。

一方、ポリスチレンフォームだけで構成されたものや、インシュレーションボードでポリスチレンフォームを挟み込んだ建材畳床は 断熱性に優れ、水を吸わず軽くて施工しやすいなどの長所をもちます。また、ポリスチレンフォームの上下を藁で挟んだものは、 藁床の味わいや吸放湿性があり、軽くダニの発生の心配のない畳床で、最も普及しています。

畳表

畳表は畳の表層に張る乾燥したい草を緯糸にし、織り上げるものですが、このい草の種類や品質、織目(数)によって畳表の質が 決まります。

材料となるい草はイグサ科の多年生植物で、熊本県・福岡県・高知県・岡山県などで栽培されています。真夏に刈り取り、染土と呼ばれる泥のなかに漬けて染め、乾燥させた後に選別したものを使用します。この泥染めの工程が畳独特の色合いと香りを生み出します。

 

畳の種類

現在使用されている畳は大きく分けて二種類になります。

それぞれの特徴をご紹介します。

い草を使った畳

日本で昔から使われてきた天然素材の畳です。

畳は、畳床に畳表を被せて縁を付け、 床一面に敷き詰める建築材料で、主に藺草(いぐさ)・藁布などを用いてつくられます。高温多湿の日本の風土に最も適した床材の1つとして、今日まで広く使用されています。 畳床の藁も畳表のい草も中空のストローのような構造であるため、弾力性・断熱性・保温性に優れ、 適度に水分を吸収して乾燥時に吐き出す、湿度調整の機能も併せもっています。

また、耐久年数は4、50年と、新建材の倍近くです。

このように優れた機能を持つ天然素材の畳ですが、天然の藁床を使用する際は虫の心配があります。

そのほか、藁を作る農家さんが減っており価格が上がっていることもあり、天然の藁床を使用する機会があまりない現状があります。

 

和紙を使った畳

DAIKENの和紙畳、『健やかおもて』をご紹介します。

和紙畳表は、イ草に近い手触りや質感を再現しつつ、高い機能性を付与した工業生産の畳おもてです。

カビの発生やダニの増殖を抑え、快適さを長くキープ。畳の醍醐味を存分に味わえる健やか仕様の本格派です。

DAIKENの畳おもては機械すき和紙をこよりにして、糸をつむぐように肌ざわりのやさしさを実現。しかも、こよりを樹脂加工することで撥水性や強さもあります。

 

畳のへりの種類

縁付畳(ヘリつきだたみ)と縁無畳(ヘリなしだたみ)

畳は長手(長さ方向)の縁に畳縁の付く縁付畳と付かない縁無畳があります。また、 片側のみ縁のある片縁畳もあり、主に、地板を狭くつくった床脇に差し込む際に用いられます。 縁無畳は坊主畳ともいわれ、柔道場や農家の作業場では以前から使われてきましたが、最近では、空間を広く見せるために使用することも増えています。

縁付畳
縁無畳

畳縁(たたみべり)

畳表の長手(長さ方向)の縁を、畳に固定する目的で付けられる布製の縁を畳縁といいます。

畳縁は大きく無地縁と柄縁に分けられ、柄縁には格式の高い紋縁も含まれます。 建物や部屋の格式、用途によって使用上の約束事がありますが、一般住宅の座敷では柄縁か無地縁、茶室には無地の紺縁、床の間の縁は紋縁(高麗縁)とします。

 

丸晴工務店の畳使用例

縁無畳を使用した和室

小上がりの畳スペース

布団で寝る寝室

 

最後に

には床材としての様々な良さがあります。程よい硬さとクッション性を兼ね備えているため非常に心地よく過ごすことが出来ます。そして何より独特の風合いが魅力的です。

昔から使用されてきた天然素材のい草を使用した畳、最近ではダイキンさんの健やかくんなど和紙でできた畳を使われる方も増えています。畳は、客間にしたり、食事をしたり、横になってくつろいだりもできる汎用性の高さがあります。そんな畳をお家に取り入れてみるのはいかがでしょうか。

 

参考文献:「和風デザイン図鑑」

参考文献:DAIKENホームページ https://www.daiken.jp/buildingmaterials/tatami/

 

そのほかの素材についてのブログはこちらhttps://www.marusei-j.co.jp/%e5%b1%8b%e6%a0%b9%e6%9d%90%e3%81%ae%e3%80%8c%e7%93%a6%ef%bc%88%e3%81%8b%e3%82%8f%e3%82%89%ef%bc%89%e3%80%8d%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%a9%e3%82%93%e3%81%aa%e7%89%b9%e5%be%b4%e3%81%8c%e3%81%82%e3%82%8b/

屋根材の「瓦(かわら)」ってどんな特徴があるか知っていますか?

神聖木として高貴な『檜(ヒノキ)』

『木』のお家と言っても、どんな木があって、どんな特徴があるかご存知ですか?

私は、今まで全く知りませんでした。

意外と知らないことも多く、でも知ることで家を建てるときに、その場所場所にあった『木』を選ぶことができますし、一つ一つ家に使われた木々に愛着を持つことができると思います。

経年が魅力の『木』を楽しむためにも、ぜひ、これを見て一つずつ知識が広げていき、見た目や雰囲気だけでじゃなく、自分好みの木材が選べるようになってもらえたらといいなと思います。

今回は、神聖木として高貴な『檜(ヒノキ)』についてお話しします。

ヒノキとは?

檜(ヒノキ)は、高さが30〜40メートル、直径は1メートルほどの常緑高木の針葉樹で、

材の色は、淡紅白色。肌ざわりはなめらかで、独特のつやと香りがあります。

強度にすぐれ、狂いが少なく、耐久性はトップクラスで、軽く柔らかいので活用範囲が広く、肌めが非常に緻密で、均質な材料が必要な用途に適しています。

心材は特に耐朽性が高く湿気にも強いです。

そのため、古代より建築材料として重用されてきました。

現在の住宅でも、柱・土台・梁・桁・床・母屋・鴨居・敷居などさまざまな部分に使用されています。

また、建具、家具、風呂桶、工芸品、彫刻などにも使用されます。

スギに比べると、やや乾燥した土地を好みます。ただし、スギよりは生長が遅く、手入れも多く必要とされています。

木曽(長野県)をはじめ、東濃(岐阜県)、吉野(奈良県)、尾鷲(三重県)、紀州(和歌山県)、土佐(高知県)、美作(岡山県)、静岡県などが産地として知られています。

【樹名】

 ヒノキ

【科名】

 ヒノキ科ヒノキ属

【心材の色】

 帯黄白淡褐色

【辺材の色】

 淡黄白
【産地】

 福島県東南部以南の本州、四国および九州

【加工性】

 木質が軽軟なため容易
【主要用途】 構造材、造作材、家具材、建具材
【有名箇所】 長野県木曾・岐阜県裏木曾・木曾谷

【生えている場所】

山の中腹から尾根筋の斜面

 

貴重な材木 ”ヒノキ”の歴史

太古の昔、日本人は森に住み、森から食料を直接得たり、木々の貯えた豊かな水は「森のダム」として人々の生活を潤し、稲作農業を可能にしました。そして、四季折々の自然の美しさや厳しさ、森林や大地からの恵みの大きさが、日本人の自然に対する祈りの心を育んできました。

このような中で、わが国は独自の林業及び木の文化を発達させてきました。

そこで、日本人にとって無くてはならない木材として使われるようになったのはいつ頃の話でしょう。

遺跡から出土する木材の樹種を全国的に調べてみると、

ヒノキの木材は、スギの丸木船が出土したことで知られている福井県三方郡三方町の鳥浜貝塚遺跡が最も古いそうです。

縄文時代

この遺跡では、縄文時代の草創期から前期にかけて(約1万年前〜6千年前)の地層から出土した自然木(昔の人々が利用した痕跡のない木材)約3200点のうち20点がヒノキでした。

この遺跡で人々が利用した木材の中で最も古いものは約1万年前の杭でわずか2点ですが、約6千年前の縄文時代前期になるとたくさんの杭、板材、そしてスプーン状の木器、また彫刻のある細長い板などがあり、生活に密着したヒノキ材の利用が既に見てとれるようになっていきました。

しかし、ヒノキ材の木材利用は縄文時代を通して他にはあまりありません。ヒノキ材が他の木材より特に利用されるようになるのは、弥生時代になってからでした。

弥生時代

弥生時代の中期になると木材資料はやや増えていき、後期ともなるとどの遺跡からもヒノキ材が出土するようになり、板材などに加え、高杯・木棺・鳥形などさまざまに利用されたことがわかります。更に時代が下って古墳時代、そして歴史時代にはいるとこれは更に顕著になり、奈良・平安時代ともなるとヒノキ一辺倒ともいえる木の文化が開花します。

古墳時代を経て大和朝廷が成立し、近畿地方にその王都を造営するようになりますが、中国からは仏教のみならず政治・行政のシステムと文化をも取り入れました。中国をまねた王都造営にあたってはこれまでにない大きな建築物が数多く建てられ、そこには大量の木材が用いられ、その主要な部分がヒノキでした。古代の最大の都と言える平城京の建物の柱の樹種調査では、約6割がヒノキ、3割がコウヤマキでした。

この時期、ヒノキは柱材などの建 築材ばかりに使われたのではありませんでした。

箱もの・指物・家具など、曲物・折敷・ 桶など、木簡、それに斎串・人形・刀 形などの祭祀具などにはほとんどヒ ノキが使われていました。

木一本、首一つ

また、戦国時代以降、木材消費が急激に増加する中、木曾の木材は昔から良質で、江戸城の築城や造船、土木用材等、様々なところで利用され、木曾はヒノキの産地として注目されてきました。そして、「木曾式伐木運材法」などの技術を発達させてきましたが、技術の発達とともに木材資源の枯渇の危機から、森林保護政策として「停止木制度(ちょうじぼくせいど)」を設け、ヒノキ、サワラ、アスナロ、ネズコ、コウヤマキの伐採を禁止しました。

停止木制度は、ヒノキの保護を目的とし、ヒノキに外観が似て、かつ利用価値の高い樹種も禁止木に選びました。禁止木を伐採した者への罰は、「木一本、首一つ」と呼ばれるほどで、厳罰に処されました。

森林保護制度によって保護された樹種は「木曾五木」と呼ばれ、現在は木曾谷の名産品となっています。 

天然ヒノキと人工林のヒノキ

ヒノキの植林は各地で盛んに行われていますが、天然ヒノキの群生地は木曾谷以外にはほとんどありません。

大半のヒノキは植林材です。

天皇家の御料林と、伊勢神宮の関係者が社木の最大規模の管理組織で、これが木曾谷にヒノキが純林として残っている主因です。

日本人の天然ヒノキに対する愛着は深いものがありますが、どんなに厳しい森林管理をしても資源は枯渇する一方です。

木曾地区では、林野庁が伐採後の山に間髪を入れず植林をしているので、面積比率からみると木曾の山は天然林とはいえず、むしろ梢林地区になってきています。ヒ ノキはスギに比べて造林された若木でも需要があるので、ヒノキの植林がスギよりも多くおこなわれています。 その他の産地でも植林に力を入れていて、三重県の尾鷲地区、奈良県の吉野地区、静岡県の天竜地区が建築材の有名ブランド産地として知られています。

植林されたヒノキでも下枝打ちなどの管理を丹念にしながら育て、100年以上の長年月を経ると、表皮に近い 部分から急速に年輪幅が詰まり天然木のような木理を呈してきます。

 

ヒノキの強さ

古い神社やお寺に使われている柱などを調査したデータによれば、ヒノキ材は伐採されてから200年くらいまでは、圧縮・曲げなどの諸強度はやや上昇し、その後は緩やかに減衰し始めます。衝撃曲げ吸収エネルギーは伐採後300年までの間は30%ほど低下するものの、それ以降においてはほとんど変わらないという学術報告があります。

同じく寺社に多く使われているケヤキ材は、 伐採後300年辺りから急激にセルロ ースの崩壊と結晶化が始まり脆くなるので、ヒノキよりも耐久性が乏しいといわれています。ヒノキはあらゆる面から見て最高の構造材といえます。

天然ヒノキは仏像彫刻に多く使われ、国宝になっています。春慶塗の木地、櫛、木槌、道具の柄、梯子、額縁 などの小物の用途があります。ヒノキの枡は有名で、1升枡は江戸時代の計量器具の中でも一番多く使われていた道具です。

写真提供者 株式会社nojimoku さん https://nojimoku.jp/
写真提供者 株式会社nojimoku さん https://nojimoku.jp/

 

ヒノキにまつわる神話

むかし、出雲の国(現在の島根県)に、

ひとつの体に頭が8つ、尾が8つある大蛇

ヤマタノオロチがあらわれました。

その大きさは8つの山と谷を渡るほどで、

背中はコケにおおわれ、

スギ、ヒノキ、クスノキの大木が茂っていました。

 

ヤマタノオロチは、

毎年あらわれては村の娘を襲っていきます。

それを知ったスサノオノミコトという神様は

「8つのおけに酒をいれて置いておきなさい」と村人に命じました。

そしてその夜、ヤマタノオロチがあらわれ、

酒をガブガブと飲み、酔っぱらって眠ったところを退治しました。

 

ヤマタノオロチを退治した後、スサノオノミコトは、

自分のひげをぬいて土に散らすと、なんとスギの木に変わりました。

さらに、まゆ毛はクスノキ、胸の毛はヒノキ、尻毛はマキに。

「スギとクスノキは舟、ヒノキは宮殿、マキは棺桶にしなさい。」と命じました。

 

とても面白い話だったのでご紹介しました。

「日本書紀」で描かれたこのお話は、土石流を大蛇のヤマタノオロチに見立てて、

植林や木の使い方を後世に伝えていきました。

今も昔もヒノキは高級建材として考えられていたようで、

実際に、日本ではヒノキは法隆寺や伊勢神宮をはじめとした神社仏閣の神聖木として使われてきました。

 

ヒノキでつくる

神聖性、美観性、耐久性の全てを兼揃えたヒノキは、多くのものに使われています。

ヒノキは木造住宅の中で構造材から内装材にまで幅広く用いられています。

「水に強い」という特性を活かし、フローリングの床材や檜風呂などに活用されることもあります。

丸晴工務店では、水に強いということだけでなく、50年60年、、、と末長く住い続けていただきたい。

その気持ちから、ヒノキ材で強度のある柱を、経年変化を楽しめる柱や床を使い続けています。

写真提供者 株式会社nojimoku さん https://nojimoku.jp/

 

まとめ

檜と木曽檜(天然檜)は同じ樹種ではありますが、一般住宅に使われてきたのが檜。

この檜というのは、東濃(岐阜県)、吉野(奈良県)、尾鷲(三重県)、紀州(和歌山県)、土佐(高知県)、美作(岡山県)、静岡県などが主な産地。
一方で、伊勢神宮など、文化財レベルの社寺仏閣に用いられてきたのが木曽檜(長野県)。
同じ樹種でも、材木の世界ではまったく別物というほど扱いが違うそうです。
それでも、檜は多くの方に好まれ使われてきました。
この神々しいヒノキの材をさらに多くの方に触れたり感じたりして頂き、その柔らかさや心地よさ、そういった五感にうったえかけていけたらいいなと思い、丸晴工務店は『檜(ヒノキ)』を使い続けています。

 

 

参考文献:「木材大辞典」「日本書紀」「木の文化」

参考文献:中部森林管理局 https://www.rinya.maff.go.jp/chubu/kiso/morigatari/kisogoboku.html

丸晴工務店でこの度、社員大工を募集します。

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木造住宅の施工・造作、現場監理、お客様対応など、家づくりの工程に関わる仕事です。

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採用担当:濃沼

 

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