前回、瓦屋根について書きましたが、屋根には他にも種類があり、耐久性とコストを考えて金属屋根にする方も増えてきております。
昔から使用されてきた趣きある銅板の屋根。それに変わるチタン屋根。最近では、ガルバニウム鋼板という金属の合わさった材料を使われています。
どれがいいかと比べるのもいいのですが、今回はどんなものなのか特徴をお伝えし、ご自身に合った屋根選びをして頂ければ幸いです。
銅板
銅の歴史は同時に人類の歴史といわれています。
古代の化学技術史による化学の起源は、
第一に「火を燃やす」ということ。
第二に「調理術」で熱もしくは酵素の作用で蛋白質と炭水化物を分解したこと。
第三は「製陶術」の発見ということで、粘土の焼き方を知ったことです。
三つの発見は黎明期(時代の始まり)における人類によってもたらされたものです。
金属については,浅い川床に輝く特殊な石に興味をもち、その石を叩いて薄い板にしたり、ピンの形をつくったりしました。
さらに地表に顔を出す奇効なかたちをした自然銅塊を発見し、一種の研究的思考かが始まり、こうした行動が銅という金属を発見する起源となりました。
これらの自然銅塊は光輝性緑色の「石」 である「くじゃく石(マラカイト)」であり、また、「藍銅鉱(アズライト)」でした。
それでは人類が鉱石を製錬すると銅がつくり出せることに気付いたのはいつ頃のことでしょうか。
これには各種の学説があります。
一説によれば、最古の銅器類は「くじゃく石」を製錬してつくられたといわれています。
人類最初の文明はバビロニアのエラム地方で、この地域で製錬術が始まりさらにチグリス・ユーフラテス河流域で本格的な冶金学が 起こったと推定されています。
日本における銅建築文化
日本に青銅器文化が始まったのは弥生時代の初め(紀元前300年頃)で、終末は古墳時代の前期(紀元400年)でこの間約700年の間に、各種の銅器、青銅器かつくられましたが、日本の青銅器文化は、大陸からもってこられたことは確かとされています。
特に銅鉾(どうほこ)、剣、文などが西日本を中心に数多く発掘されていることからもその事実が読み取れます。
日本の原料の銅鉱
708年頃武蔵国秩父郡から初めて自然銅か発見され、元明天皇に献上され年号も「和銅」と改められました。
以後銅材で貨幣を鋳造する鋳造司が置かれたことは歴史的に有名で、時の通貨を和同開称と称されました。
その後関東では慶長十五年(1610年)に足尾銅山が発見され、さらに愛媛で元禄三年(1690年)に切上長兵衛という人により別子銅山か発見され、当時日本では最も最高の銅山といわれました。
こうした国産の銅資源による銅か建造物に利用されるようになったのは,加工技術の問題から鋳造による社寺仏閣の仏像、仏具、飾り金物、また塔、梵鐘などの青銅器に始まります。
特に大和地方は平城京による都が栄えたこともあり、興福寺の梵鐘(727年)、薬師寺 東塔(730年)、法隆寺夢殿(739年)、続いて747年には東大寺の大仏の鋳造が開始されました。
わが国最古の銅板屋根
屋根に銅板が初めて使われたのは、天平神護元年(765年)に奈良の西大寺創建に際し、銅塊を瓦状に鍛金加工し用いられたことが『七大寺巡礼私記』 に記載されています。
そもそもこの西大寺は称徳天皇が奈良の東大寺に対する寺として建立されました。
西大寺は薬師金堂と弥勒金堂の二つの金堂から成り、唐の建築様式を積極的にとり入れました。
このように、わが国における建造物への銅の利用は杜寺 仏閣から始まりました。
当初、屋根用に用いられた銅は精錬され、精銅としてさらに叩いて薄く加工し使用されました。
この伸板に加工される原料は、関東では慶長 十四年に足尾銅山が発見され、関西では元禄三年に別子銅山がそれぞれ採鉱を始め精銅を生産しました。しかし 当時の採鉱から精練に至る過程は大変な作業の繰り返しで困難をきわめました。
銅板屋根の性質
耐久性
銅は非常に強く、錆びにくいため、銅屋根は非常に耐久性があります。一般的に、銅屋根は50年以上持続することができます。
軽量性
銅は比重が軽いため、銅屋根は軽量で、建物の荷重を軽減することができます。
美観性
銅屋根は美しい光沢を持っており、建物の外観を向上させることができます。また、時間が経つにつれて、銅は自然に酸化し、独特の色合いを生み出すため、美しさが増します。
耐火性
銅は非常に耐火性が高く、火災のリスクを減らすことができます。
耐腐食性: 銅は耐久性があり、錆びにくいため、腐食に対する耐性があります。また、銅は塩水や酸性の環境にも耐えることができます。
経済性
ガルバニウム鋼板の3〜4倍
防火性のこんなお話
大正十一年九月関東大震災が発生し、東京周辺は 焦土と化しました。
当時いち早く震災の復興資材として 利用されたのが銅板で、店舗や住宅の屋根・壁面など化粧張り建築が競って利用されました。この時代の住宅に使用される銅板葺き屋根の一坪 当たりの重量は11キロ余りであったのに対、土瓦 葺き屋根の重量は225キロ内外で、 大変屋根の重い土瓦の住宅が多区ありました。
土瓦以外の屋根材としては 亜鉛鉄板とスレ ー トがあったのみで、特に関東大震 災では火災による焼失が多く、このため、復興本建築には防火性,耐久性に優れた銅板が多く用いられました。関東大晨災の復興になぜこれだけ多くの銅板が使用されたかについては二つの理由がありました。
一つは 、東京が地震と火災で全滅し機能が停止し、建築材料 の入手が困難な状況の中に、銅板だけは資材として 充分確保 され、しかも防火材として非常時に対してメ ー カ ー側の対応が早く積極的に活動したこと。
二つめは、当時内外の経済が不況で銅価が下落し、一般庶民でも充分使用できる価格でした。
こうして関東大震災の復興に役立った当時の銅壁建築は、 現在も東京の中央区, 台東区, 墨田区などに数多く現存しています。因に、 大正九年十二月一日に施行された市街地建 築法の「第八 防火地区」の項において金属板のことが記載され、銅板は防火材として法規で認められました。
チタン
チタンが使われるようになった経緯にはこんなところからだそうです。
銅は緑青になれば皮膜ができ、侵食されずに40年から50年と保っていました。
しかし、ある住宅で瓦葺き屋根の谷板に厚さ0.4mmの銅板を使ったところ、12年で穴が空いてしまったそうです。
他でも似たような現象が起こったので調べたところ、いずれも起り(むくり)屋根だったので銅の伸び縮みによってクセがつき、同じ箇所ばかり屈折して金属疲労が起こってしまっていたそうです。
また、もう一つの腐食の原因として、瓦に問題がありました。
それは、瓦を薪で焼いていた時代は良かったのですが、重油やガスで焼くようになるとそれらで焼いた瓦には、銅を腐食する化学物質が残っていたそうです。その化学物質と酸性雨が一緒になり銅を腐食させていたそうです。
そうして、銅からチタンが使われるようになっていったそうです。
チタン屋根の性質
耐久性
瓦屋根の約1/13の軽さで、地震の揺れを軽減。
屋根部が重いと地震の際に建物上部の「横揺れの振り幅」が大きくなります。金属屋根で最軽量のチタン屋根は「横揺れの振り幅」を最小限に抑えられます。
チタンは非常に軽量でありながら、耐久性が非常に高い素材です。そのため、チタン屋根は耐久性が高く、長期間の使用にも耐えることができます。
耐熱性
金属屋根は真夏の猛暑時など表面温度が80℃を超えることがあります。その高熱により屋根材がミリ単位で膨張します。
そのため屋根材の固定箇所を傷めたり、屋根の歪みを引き起こすことがあります。
チタンは熱による伸縮性が小さく、銅板と比較して熱による伸び縮みは約1/2に抑えられます。
そのため、日射熱による屋根の歪みや、屋根の固定箇所の負担を半永久的に軽減いたします。
耐腐食性
チタンは腐食に強く、錆びにくい素材であるため、屋根の表面に付着する雨水や空気中の化学物質による腐食にも強いです。
美観性
チタン材の表面は安定した酸化皮膜に覆われているため、屋根に使われる金属素材の中では比類なき耐食性能を誇ります。
通常の建材使用環境で腐食する可能性は皆無です。
また、見た目の色彩に関しても塗装ではなくチタン材の酸化皮膜そのものの素地色のため紫外線や海塩粒子による劣化の心配はありません。
光沢のある美しい表面を持ち、豊富な色彩があります。そのため、建物の外観にも大変美しく、高級感を演出することができます。
経済性
ガルバニウム鋼板の4.5倍ほど
ガルバニウム剛板
ガルバリウムは、めっき金属として純亜鉛ではなく、アルミニウム +亜鉛+珪素 の合金をいいます。
アルミニウムはめっき層表面に強固な不動態皮膜を形成して、めっき層を保護する働きを持っています。
亜鉛は、犠牲防食と言って、水中などの腐食環境下において鉄よりも先に亜鉛が溶け出すことで、原板である鉄の腐食を防止します。
そのため亜鉛が腐食し、腐食生成物がめっき層の腐食進行を抑制し、亜鉛が腐食して空いた穴の部分をアルミニウムが保護するため、全体として高い防食性を発揮します。
そのガルバニウムを施した鉄(鋼板)の建材をガルバニウム鋼板と言います。
詳しく書いた記事はこちらhttps://www.marusei-j.co.jp/外壁材のガルバニウム鋼板について/
まとめ
いかがでしたでしょうか?
金属屋根と言ってもたくさんの種類があり、今回は主な金属でしたがそれぞれの成り立ちや特徴など理解していただけたのではないでしょうか?
最近ガルバニウム鋼板が選ばれている理由としてもやはり、建材などが値上がりし経済面を考えて、でも耐震性や耐久性を落としたくない。そういった希望もあって総合的に選ばれている方が多いということなのかもしれませんね。
これらを参考にご自分に合った屋根材が見つかるといいですね。
そのほかの屋根材
瓦屋根について https://www.marusei-j.co.jp/屋根材の「瓦(かわら)」ってどんな特徴がある/
参考文献:建築資料研究社「和風建築シリーズ”屋根”」
:株式会社カナメhttps://www.caname-jisha.jp/titan/